[機動隊「土人」発言]県民を愚弄するものだ - 沖縄タイムス(2016年10月20日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/67351
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驚きを禁じ得ない暴言だ。
米軍北部訓練場のヘリパッド建設現場に通じるゲート付近で、フェンスを挟んで工事に抗議していた市民らに、大阪府警の機動隊員が「土人」などと暴言を吐いた。
沖縄県民への差別意識が露骨に出た言葉である。県民を愚(ぐ)弄(ろう)するもので、許せない。
大阪府警の20代の機動隊員は18日午前、フェンスを揺らすなどして抗議していた市民らに「触るなくそ。どこつかんどんじゃボケ。土人が」と発言した。
その直前にも、大阪府警の別の20代機動隊員が「黙れ、こら、シナ人」と差別的発言を浴びせた。
まるで暴力団か、街頭でヘイトスピーチ(憎悪表現)を繰り返す団体のような耳を疑う発言である。
土人」も「シナ人」も明らかな差別用語である。そういう言葉が公務中の機動隊の口から平然と飛び出すこと自体が異常だ。
県警は「差別用語で不適切な発言だった」などと謝罪したが、当然である。だが、それで済むわけではない。
2人の機動隊員は事実関係を認め、「不適切と承知している」、「右翼関係者につられて思わず言ってしまった」などと県警の事情聴取に答えているようだが、本当にそうなのだろうか。
6都府県から派遣された約500人の機動隊員のうち、たまたまこの2人が暴言を吐いたのだろうか。
機動隊の派遣を要請した金城棟啓県公安委員長にも説明を求めたい。

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翁長雄志知事は急きょ会見し、「言語道断で到底許されない」と強い憤りを表明した。20日に池田克史県警本部長に抗議する。
翁長知事が那覇市長だった2013年1月、沖縄の全市町村長らがオスプレイ配備反対を安倍晋三首相に訴えるため「建白書」を携えて上京。東京・銀座をデモ行進した際のことが思い出される。
沿道からは「非国民」「売国奴」などの罵声が上がり、「中国のスパイ」「日本から出て行け」などの暴言が飛び交った。
底流には沖縄を見下し、「植民地」扱いする意識がいまだにあると考えざるを得ない。だが、これだけではない。基地問題をきっかけに出てきた沖縄バッシングの空気が渦巻いている背景もある。
ネット空間の影響を受けたかのように、機動隊員が「土人」や「シナ人」など日常生活では使わない差別用語を吐くことが「嫌沖」の根の深さを示している。

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民意を無視してヘリパッド建設を強行する安倍政権と、市民を強制排除するなど権力をむき出しにする機動隊は一体である。
「不偏不党且(か)つ公平中正を旨とする」と警察法はうたうが、工事車両に表示番号がないなど違反が相次いでも機動隊は警備している。抗議する市民からは多くの負傷者が出ており、対応が公平でないのは歴然としている。
安倍首相は今回の暴言を国会で謝罪するとともに、応援機動隊を引き揚げさせ、工事をやめるべきだ。