志布志事件 二審も「捜査違法」 住民6人救済 高裁賠償命令 - 東京新聞(2016年8月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201608/CK2016080502000248.html
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二〇〇三年の鹿児島県議選を巡る選挙違反冤罪(えんざい)事件(志布志(しぶし)事件)で、県警の取り調べを受けた住民が、県に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁支部(西川知一郎裁判長)は五日、一審鹿児島地裁判決より捜査の違法性を広く認定した上で、救済範囲を原告六人全員に広げた。賠償額は六十万〜百十五万円。
昨年五月の一審判決は、買収事件に関わった疑いを持たれた原告七人のうち三人に関し、違法な取り調べや逮捕・勾留があったと認定、一人当たり三百三十万円の請求に対し、三十四万五千〜百十五万円の賠償を命じた。逮捕・勾留され、その違法性を認められた一人を除き六人が控訴。県側は控訴しなかった。原告はいずれも起訴されていない。
一審は、容疑者を大声で怒鳴り、机をたたきながら「外道」という言葉で非難するような取り調べを違法と指摘。二審はさらに「容疑の程度に対し、過度に追及的、長時間の調べがあった。社会通念上、相当な範囲を明らかに逸脱していた」と厳しく批判した。
事件では公選法違反の罪で住民十三人が起訴されたが、公判中に死亡した一人を除く全員の無罪が確定し、公判などを通じて違法捜査が判明した。元被告らが国と県に賠償を求めた訴訟では、計約六千万円の支払いを命じる判決が確定した。

◆提訴10年 訴え届く
志布志事件の発生から十三年。事情聴取を受けた住民らが県に賠償を求めた訴訟の原告団長を務める浜野博さん(77)は「事件はでっち上げで、調べは常軌を逸した。人権侵害を認めてほしい」と訴え続けてきた。捜査の違法性を認めた五日の二審福岡高裁宮崎支部判決に「不安もあったが、本当にうれしい」。ようやく願いがかなった。
浜野さんによると、任意の聴取で、消防団員への現金提供を認めるよう迫られた。「身に覚えがない。分からない」。何度訴えても「逮捕されたら、孫が学校でいじめられる」「子どもらがおまえの罪を一生かぶって生きていいのか」と脅された。取り調べは連日、長時間続き「書かんか。押さんか」とどう喝され、最後には自白調書に署名、押印させられた。
別の原告は、交番の窓の外に向けて「二万円と焼酎二本をもらった」と叫ばせられた。
「私たちのような冤罪被害者を二度と生まない」。その思いから提訴したが、一審判決が捜査の違法性を認定したのは原告七人のうち三人だけで、浜野さんも訴えを退けられた。
提訴から十年。判決後の記者会見では「良い判決がもらえる。そう信じないと生活がめちゃくちゃになりそうだった」と、目に涙をためた。「警察の恐ろしさを見せつけられた。決して忘れられない」。かみしめるように話した。