男女の格差 不平等を拒む一歩を- 朝日新聞(2019年12月24日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S14305558.html
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政治での女性の存在感が着実に膨らんでいる。それが世界の流れだが、悲しい現実も知っておきたい。日本がずっと取り残されていることだ。
著名な指導者らを招く会議の主催者として知られる世界経済フォーラムが、男女格差の報告書を毎年出している。最新版で日本は153カ国のうち、過去最低の121位だった。
政治や経済、教育、健康のデータを総合したもので、国別の指数をみると、この1年で108もの国で格差が改善したが、日本は逆に悪化した。
世界的な改善傾向について同団体は「女性の政治参画が著しく進んだ」と分析している。議会の議席や選挙での候補者の一定数を女性に割り当てる、クオータ制を導入した国は、今では120カ国を超す。
今年は、欧州委員長や欧州中央銀行で初めて女性のトップが誕生した。北欧などでは女性の政治参加と管理職の比率が一緒に増える傾向があるという。
労働市場にも波及すれば、男女の賃金格差を縮める効果も期待できる。政治分野を突破口にして企業などの幹部も増やそうと、世界は新たな目標を見据えているようだ。
そんななかで、日本の「変わらなさ」は突出してみえる。
とくに政治分野がひどい。衆院の女性議員は現在1割ほど。格差報告書で日本が悪化した主因は閣僚数の少なさで、今年1月時点では19人中1人だけ。経済でも女性管理職は世界水準をはるかに下回る。
国会では昨年、選挙での候補者数をできる限り男女均等にするようめざす法律ができた。だが、今年の参院選自民党が立てた女性候補は15%だった。安倍政権が掲げる「女性が輝く社会」の看板が空々しく響く。
努力義務の法律だから守られないのならば、罰則を検討すべきだろう。多数の国がすでに先行しているクオータ制について、なぜ日本が導入しないのか、国際社会にも通じる理屈で説明できるだろうか。
日本でも、平等を求めて行動する人は増えている。選挙での女性の立候補を促すために、学識者たちが政治家育成セミナーなども開いている。そうした試みはもっと支援されるべきだ。
無関心やあきらめを脱するためにできることもある。候補者均等法を守らぬ政党には投票しない。女性を差別する企業や団体には「ノー」を示す。そんな行動が積み重なれば変化が生まれるのではないか。
女性が軽んじられる社会は、弱者や少数派も差別する。誰もが暮らしやすい多様な社会をめざすためにも、不平等を受け入れない一歩を踏み出したい。