候補者男女均等法 意識と環境の変革を - 琉球新報(2018年5月22日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-723230.html
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世界から見ても恥ずべき状況を脱する一歩になってほしい。「政治は男のもの」という固定観念を崩す好機である。
議会選挙で男女の候補者数をできる限り「均等」にするよう政党に努力を促す「政治分野における男女共同参画推進法」(候補者男女均等法)が参院本会議で全会一致で可決、成立した。今月中にも施行される見通しだ。
政党などに候補者数の目標を定めるなど自主的な取り組みを求める国内初の法律である。政策の立案や決定に「多様な国民の意見が的確に反映される」ことが趣旨で、女性議員を増やす狙いがある。性的少数者や障がいのある人に政治の道を広げるきっかけとしても期待されている。
背景には、日本の女性議員があまりにも少ない現状がある。
世界の国会議員が参加する列国議会同盟が発表した2018年の報告書によると、日本の衆院議員の女性比率は10・1%で193カ国中158位。地方議会も女性比率は1割程度にすぎない。世界全体の23・4%よりはるかに低く、アジア地域でも中国(71位)、韓国(116位)よりも低い。
その弊害だろうか。財務省事務次官のセクハラ問題で閣僚や官僚に心ない発言が目立つ。待機児童問題など子育て政策の停滞も、女性議員が少ないことが影響していないか。「女性活躍」を掲げる安倍政権だが、肝心な足元の政治分野が「活躍」に程遠い状況では、社会全体の改善は進まないだろう。
その意味で、数値目標などを政党に求めた均等法を評価したい。法的拘束力はなく、努力規定ではあるものの、政党へのプレッシャーとなり、現状を変える力となるはずだ。
法律が成立する過程では慎重論もあった。「適材適所だ」「現職議員を外してまで女性を増やすのか」などだ。しかし、有権者の半分が女性であることを考えれば、女性が1割強しか占めない日本の議会はいびつというほかない。これでは生活に根差した国民の声が政策に直結しにくい。
フランスは政党・政治団体の候補者数の男女差が2%を超えると政党助成金が減額される。また、約130の国や地域が男女均等を実現する手法として「クオータ(割り当て)」制度を何らかの形で導入しているという。世界では「待ったなし」で均等化が進められている。
法を生かすには「政治は男のもの」という意識の改革と、女性が立候補しやすい環境の整備が不可欠である。川に例えると、下流の幅を広げても、源流から水が流れにくいのでは、幅を広げた意味が損なわれる。
女性候補を増やす各党の取り組みや実績を有権者がチェックすることも大切だ。多様性を尊重した政治を実現するのは、有権者の1票である。