(政界地獄耳) 国民に政治を諦めさせた安倍政治 - 日刊スポーツ(2019年12月17日)

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★早速読んだ「無敗の男 中村喜四郎 全告白」(常井健一著 文芸春秋刊)は一級の近代政界史であり、自民党と今の野党を読み解く指南書であることが読み始めてすぐに分かった。ゼネコン疑惑で検察と渡り合い、実刑を経て選挙では14連勝を続ける中村の哲学と政局勘が行間から浮かび上がる。平成に生きた昭和の政治家が、令和では野党に身を置き、その集大成とはどんなものか。

★興味深い話は尽きないが、今の政治に触れている箇所から幾つか抜き出してみる。自らの立ち位置について「私のあの事件以来、政権には与しない立場を貫いてきた。四半世紀も司法権力の暴走と対峙し、選挙を通して国民の負託を受けながら、一貫して無罪を訴えた男です。権力の危うさというものを身をもって体験した1人として、何が何でも権力に寄るわけにはいかないのです」とし、自民党については「自民党には保守派からリベラル派まで幅広くいて、反対する者がいたら排除せずにみんなの意見を丁寧に聞いていくだけの責任を持とうという姿勢が昔は在りました」。

★安倍政治については「誰もモノが言えなくなり、総理の独断でどんどん決まっていく。自民党政調会は形骸化する。マスコミの切れ味も悪くなる。行政が力をつけていき、立法府の力が弱くなる。その結果が森友・加計学園に現れた役所の忖度や不祥事なのではないか。問題の核心は『野党の力がない』という話ではなく与党の自浄作用が無くなった」「つまるところ、安倍政治は国民に政治をあきらめさせることに成功した特殊な例」と斬ってみせた。

★そして「今の野党の連中ではとても小沢さんのような大人のレベルの会話はできない」。野党は「政治のことも、国民のこともよくわかっていないという感じ。自分たちがやっていることは正しいことだと思っているのにいっこうに結果が出ない。どうして結果が出ないのかわかってない。最初にスタートする前に考えるべきことを考えていない。子供がケンカをやっているわけだから。今は与党にだけ政治を分かっている人がいて野党にはいない」と分析した。無敗の男のすごみはどう生かされるのか。(K)※敬称略

 

 

無敗の男 中村喜四郎 全告白

無敗の男 中村喜四郎 全告白