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米軍機が国内で墜落しても日本の捜査機関は手出しできない。政府は主権放棄の状態をいつまで放置し続けるつもりなのか。
米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが2016年12月13日夜、名護市安部の沿岸部に墜落し大破した事故で、海上保安庁中城海上保安部が、操縦していた機長を氏名不詳のまま那覇地検に書類送検した。航空危険行為処罰法違反の容疑である。
米軍が協力を拒んだため、海保による機長の事情聴取は行われず、容疑者を特定することさえできなかった。必要な捜査が尽くされていない。
海保によると、この機長は、空中給油訓練のため操縦していたオスプレイの速度を保つ業務上の注意義務を怠り、空中給油機のホースと接触して機体の一部を損傷させ、着水して機体を破壊させた疑いが持たれている。
なぜ注意義務を怠ったのか。オスプレイと空中給油機の位置関係はどうだったのか。接触後の機長の対応は適切だったのか。国民は真相を知ることができない。
「機長のミスが原因」と結論付けた米国の事故調査報告書をうのみにするのは危険だ。米軍の言い分は事故を起こした被疑者サイドの主張にすぎない。国内で起きた事故である以上、日本の捜査機関が主体的に原因や過失の有無を解明することは至上命令だ。現状では、オスプレイの構造的な欠陥が原因となった可能性も否定できない。
安倍晋三首相は17年11月21日の衆院本会議で、オスプレイ墜落事故の際、海保が原因究明に関与できなかったことを問われ、「海上保安庁において所要の捜査を行っている。指摘は当たらない」と答えた。
だが海保関係者は、機長のけがの有無など詳細は分からず、事故後の対応の妥当性についても「判断がつかない」と述べている。これが「所要の捜査」を行った結果なのか。首相の答弁は捜査現場の実情を度外視しており、事実に反するのは明らかだ。
このような、捜査を尽くせなくても捜査していると言いくるめようとする政府の態度は、米軍の傍若無人な振る舞いをますます助長する。
その結果、最も大きな不利益を被るのは、在日米軍専用施設面積の7割が集中し、基地と隣り合わせの生活を強いられている沖縄県民である。
日米地位協定が壁になり、米軍が起こした事故に日本の捜査権が及ばない現状は理不尽極まりない。さらに問題なのは、オスプレイの事故を含め、協定が定める日米相互の捜査協力義務さえ守られていないことだ。政府は米国に強く抗議してほしい。
県民の目から見れば、地位協定は、日米和親条約や日米修好通商条約に比肩するほど不平等な取り決めである。政府は一刻も早く改定を米国に提起すべきだ。