(欧州へ地位協定調査)連携し改定のうねりを - 沖縄タイムス(2019年1月6日)

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日米地位協定の改定を求めている県は、近く北大西洋条約機構NATO)本部のあるベルギーとイギリスに職員を派遣する。
米国はNATOに基づき、欧州各国に米軍を駐留させている。NATO加盟国は地位協定を締結しており、運用実態について調査する考えだ。
県は翁長雄志知事時代の2018年、第2次大戦の敗戦国であるドイツが米国と結ぶボン補足協定、イタリアとの米伊了解覚書を調査した。
今回はこれに続くもので、玉城デニー県政が対象国を広げ調査を継続することは、地位協定の不平等性を可視化する上で極めて重要だ。
ドイツ、イタリアの調査で分かったことは米軍の訓練にも国内法が適用されていることだ。ドイツは立ち入り権が明記され、緊急時には事前通告がなくても入ることができる。イタリアでは米軍基地はイタリア軍が管理し、司令官が常駐している。
いずれも訓練には事前通告や承認が必要で、騒音問題などの地域の意見を吸い上げる委員会が設置されている。
両国とも米軍機事故による人的被害が出たのを機に米側と交渉した末の改定である。
1988年、イタリアで低空飛行していた米海兵隊機がロープウエーのケーブルを切断し、ゴンドラに乗っていた20人全員が死亡した。
当時の外務大臣は県の聞き取りに「米国の言うことを聞いているお友達は日本だけだ」と辛辣(しんらつ)だ。故翁長氏が「憲法の上に地位協定がある」と語ったこととつながる。

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沖縄では地位協定に阻まれて捜査ができない事件・事故がたびたび起きている。
昨年12月に米軍嘉手納基地から空軍兵が拳銃を持ったまま脱走し、読谷村内の集落で米軍に身柄を拘束された。
県警は銃刀法違反容疑で捜査する方針だったが、事情聴取ができず、心身治療のためとして米国に移送された。
昨年6月に名護市数久田の農作業小屋で銃弾が見つかった際に、米軍から同種の弾が提供されず、捜査は難航。原因や再発防止策が示されないまま使用通知された。
大型ヘリによる宜野湾市の保育園や小学校への部品や窓枠落下、名護市安部沿岸部へのオスプレイ墜落、沖縄国際大への大型ヘリ墜落…。日本の捜査当局は機体の差し押さえさえできなかった。
憲法・国内法」と「安保・地位協定」が逆転していると言っても過言でない。

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昨年7月、全国知事会が米軍に航空法や環境法令など国内法を適用することなど地位協定改定を盛り込んだ提言を全会一致で採択した。故翁長氏が主導し、県のドイツ、イタリアの調査を踏まえ、全47都道府県知事が賛同した意義は大きい。
知事選で玉城氏と安倍政権が推した佐喜真淳氏も改定を公約に掲げた。保革を超えた要望なのである。
外務省は「他の地位協定に比べて不利になっていることはない」と改定には一貫して後ろ向きだ。県は地位協定の調査結果を公表している。改定のうねりを全国を巻き込んでつくり出してもらいたい。