[大弦小弦]「貧乏とあほは遺伝」なのか - 沖縄タイムス(2019年12月2日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/505060
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保育園児の息子を連れ、居酒屋に行った時のこと。1杯目を注文する前に、店員から「お子さんがいるので8時まででお願いします」とくぎを刺された

▼「しっかりした店だ」と頼もしく思う一方で、「元からそのつもりだった」「たまの息抜きくらい」という気持ちも。「正しい社会規範」には反発を呼ぶ面もある

浦添市が、深夜の子連れ飲食の制限措置を検討している。賛成する学習塾経営の男性が会議に招かれ、「貧乏とあほは遺伝する」と発言した

▼男性は「あえてきつい言葉を使った」と説明する。それにしても。遺伝ならば全ては遺伝子のせい、「自己責任」になる。発言は行政が生活に踏み込み、ルールを決める危険性を示す。環境的な要因を無視して「とにかくルールを破る者が悪い」と追い込みかねない

▼子どもたちにはよく寝てほしい。しかし所得が低く離婚率は高い沖縄で、そうさせたくてもできない親の事情もある。「早く寝かせた方がいいよ」という関与は周囲に任せ、行政は貧困が連鎖する構造に切り込むべきではないか

浦添市による意識調査で、保護者の9割が制限措置に好意的だったという結果にも不安を覚える。多数が賛成する一見正しい社会規範も、当事者不在なら解決策にはならない。行政や多数の市民は、その声に向き合っているだろうか。(阿部岳)