[大弦小弦]彼女は、にこりともしなかった… - 沖縄タイムス(2019年11月27日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/503023

彼女は、にこりともしていなかった。「民主派がもらった一票は、市民が流した血だ」。香港区議選の結果を受けた民主派の女性リーダー、周庭さんの言葉が重い

▼香港警察は催涙弾や化学物質入りの放水ではあきたらず、男子学生に実弾を撃ち込んだ。一部で抗議行動が先鋭化しているが、もともとは穏健なデモだった。エスカレートする警察の暴力への恐怖から、やむにやまれず自衛しているのだろう

▼デモへの有権者の支持は圧倒的だ。民主派の獲得議席は8割以上。改選前はわずか3割弱だった。選挙で示された民意を公権力が踏みにじれば、新基地建設を抱える沖縄の構図に重なる

▼県民が国政選挙、知事選、県民投票で示した反対の意思を、日本政府は一顧だにしない。それどころか、座りこむ人たちを暴力的だと批判し、建設強行を正当化する。香港で進行中の事態と合わせ鏡だ

▼香港民主派の躍進に、気がかりもある。中国の習近平国家主席が「香港行政長官には統治能力がない」と見限り、弾圧に乗り出さないか心配だ。人民解放軍の力が必要だと判断すれば、香港が第二の天安門になりかねない

▼武力鎮圧は禍根しか残さない。デモ収束へ必要なのは警察による暴力を抑制し、対話の場を設けること。さらに、立法会や行政長官の選挙を民主化する改革の実行ではないだろうか。(吉田央)