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香港区議選は中国、香港政府に批判的な民主派が圧勝した。市民による直接投票で最も民意を反映する選挙である。両政府は民主化を求める民意を尊重し、デモ隊の要求に耳を傾けるべきである。
四年に一度の区議選(計十八区)は二十四日に投開票が行われ、民主派が計四百五十二議席のうち85%超の三百八十八議席を獲得し、歴史的な圧勝を収めた。
香港では六月から「逃亡犯条例」改正反対を発端に民主化を求める住民デモが続き、香港警察は強硬策で制圧を図ってきた。
改選前に議席の約七割を占めていた親中派は大敗し、一九九七年の香港返還以降、初めて民主派が総数で過半数を占めた。「一国二制度」を踏みにじる中国の姿勢に「ノー」を突きつける香港の民意が明確に示されたといえる。
投票率も前回の47%をはるかに上回る71・2%と返還後最高を記録した。二〇一四年の雨傘運動の挫折以降、顕著となった香港での民主化後退への市民の危機感や関心の高さが浮き彫りになった。
デモ隊の訴えは、民主的な選挙制度の実現やデモを「暴動」と認定したことの取り消しなど「五大要求」へとすでに変化している。
条例案撤回以外は応じなかった林鄭月娥行政長官は区議選で示された民意に謙虚に耳を傾けるべきだ。要求の全てに応えることは無理でも、妥協点を探る対話に乗り出すことが政治の知恵である。
林鄭長官は抗議行動が収まらない場合、区議選延期も示唆していた。デモ隊が選挙前に過激な抗議を控え、民意を測る試金石である区議選を実施させたことは「高度な自治」を守る選択であった。
香港高等法院(高裁)は、「事実上の戒厳令」といわれる緊急状況規則条例の発動による「マスク禁止規則」を香港基本法違反とする判断を示した。これも、香港では真の法治が生きていることを国際社会に示したものである。
注目すべきは中国の対応だ。習近平国家主席は十一月中旬、デモを「暴力犯罪行為」と呼び、制圧する姿勢を示した。
中国の全国人民代表大会(国会)常務委員会は、香港基本法の解釈権を持つことを理由に、法院判断を覆す可能性すら示唆した。
香港の民意や司法がこうして「高度な自治」を守る姿勢を示したのに、中国が基本法の解釈権をたてにそれを踏みにじるなら、「一国二制度」の順守は口先だけだと批判されても仕方がない。