香港警察と学生の衝突 暴力の独立調査委員会を - 毎日新聞(2019年11月20日)

https://mainichi.jp/articles/20191120/ddm/005/070/026000c

香港から中国への容疑者移送を可能にする「逃亡犯条例」改正案に端を発した香港の混乱で警察と学生らの衝突が激しさを増している。
大学に立てこもった学生らを香港警察が包囲し、催涙弾や火炎瓶が飛び交う映像が流れ、国際社会も懸念を深めている。力では事態の収拾は望めない。香港政府は学生や市民の声に耳を傾け、対話の道を開く譲歩に踏み切るべきだ。
香港情勢は今月、厳しさを増した。習近平中国国家主席が上海で会談した林鄭月娥(りんていげつが)行政長官に暴力活動の制止や処罰を求めたため、香港警察が強硬姿勢に出たとの見方がある。
学生側も道路をバリケードで封鎖するなど交通網をマヒさせる戦術をとり、これを阻止しようとする警察官の発砲で学生が一時重体になる事件も起きた。
24日に予定される区議会選では民主派の優勢が伝えられるが、香港政府は治安悪化を理由に延期を検討している。衝突の激化を選挙延期の口実に使われるのは学生側の本意でもあるまい。
香港高等法院(高裁)は10月施行の覆面禁止法を香港基本法違反と判断し、警察も覆面着用の取り締まりを停止した。かろうじて法治や司法の独立が機能していることを示すともいえる。
だが、香港基本法の解釈権を持つ中国の全国人民代表大会は「強烈な不満」を表明し、判断を覆す意向を示した。
国際社会に公約した「1国2制度」や「高度な自治」を軽んじるような強圧的な姿勢だ。中国はこうした姿勢が香港内の反発を強めてきたことを自覚し、これ以上、介入を強めるべきではない。
長い対立で警察と学生らの間には不信が渦巻き、互いに憎悪を募らせている。信頼回復のきっかけをつかむにはやはり対話しかない。
民主派や学生は警察が抗議参加者多数を逮捕する一方で、過剰な暴力を行使した警察官が責任を問われないことに強い不満を持っている。
林鄭氏は警察の違法行為調査のため、市民の多くが求める独立調査委員会の設置に応じるべきだ。さもなければ、6月時点で「逃亡犯条例」改正案撤回に応じず、混乱を長期化させた愚を繰り返すことになる。