思いやり予算 米の増額要求は論外だ - 東京新聞(2019年11月22日)

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トランプ米政権が、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を四倍以上に増額するよう要求している、という。日米安全保障条約上、日本側に義務のない負担だ。増額要求は論外である。
米外交誌「フォーリン・ポリシー」が現職、元職の複数の米政府関係者の話として報じた。
二〇一六年度から五年間の思いやり予算は総額九千四百六十五億円で年平均千八百九十三億円。支出の根拠となる特別協定の期限が二一年三月に切れるため、日米両政府は来年、協定更新の協議を本格化させるが、今年七月に来日した当時のボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が二一年度以降、四倍以上の年八十億ドル(約八千七百億円)に増額するよう、日本側に求めたという。
菅義偉官房長官河野太郎防衛相は「そのような事実はない」と否定するが、トランプ政権は北大西洋条約機構NATO)や韓国などの同盟国に軍事費や米軍経費負担の増額圧力を強めている。日本に同様の要求があっても不思議でない。安倍内閣はまず米側との協議内容を明らかにすべきだ。
安保条約に基づく日米地位協定は、駐留米軍に基地や訓練場などの施設・区域を提供する義務を日本側に課す一方、駐留に要する経費は米側負担と定めている。
思いやり予算は米側が負担すべき人件費や光熱水費などを日本側が代わって負担するもので、円高や米国の財政赤字などを背景に一九七八年度から始まった。根拠を問われた当時の金丸信防衛庁長官が「思いやりをもって対処する」と答えたことにちなむ、そもそも日本側に義務のない負担だ。
日本政府は思いやり予算以外にも、米軍施設の借料や基地周辺対策費、米軍再編費用などの駐留米軍関係経費を負担しており、その額は、防衛省以外が所管する基地交付金などを加えれば総額八千億円近くに達する。重い負担だ。
前回協議の際、日本側は厳しい財政事情や自衛隊の任務拡大などを理由に減額を求めたが、米側は応じなかった。米側の今回の増額要求の背景には、トランプ大統領の再選に向けた宣伝材料にしたい事情もあるのだろう。
しかし、日本側の厳しい財政事情は変わらず、消費税増税で国民の負担感も増している。条約上の義務がない思いやり予算の増額に国民の理解が得られるだろうか。
安倍内閣はこれ以上、トランプ米政権におもねらず、毅然(きぜん)とした態度で交渉に臨むべきである。