駐留経費増額要求 いびつな「同盟」見直しを - 琉球新報(2019年11月18日)

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在日米軍の駐留経費負担(思いやり予算)を巡り、トランプ米政権が日本政府に対し、現行の5倍の増額を求めていた。トランプ氏の法外な要求をむしろ奇貨として、ゆがんだ日米の「同盟」関係を見直していくべきである。
国家安全保障問題担当のボルトン大統領補佐官(当時)が7月に来日した際、韓国政府に在韓米軍の負担を5倍に引き上げるよう求めると説明し、日本も同様の増額を検討すべきだと迫ったという。
増額要求は来年の大統領選に向け、貿易交渉など経済面を含めて日本の譲歩を引き出そうとするトランプ氏特有のディール(取引)との見方も強いが、今後圧力を強めるとみて間違いないだろう。
日本側はボルトン氏に対し「日本は既に同盟国の中で最も高い割合を負担している。非現実的だ」と拒んだ。だが安倍政権は昨年もトランプ氏に言われるがまま、105機に上る最新鋭ステルス戦闘機など高額な米国製武器の大量購入を決めている。拒否の姿勢が変わらない保証は全くない。
「同盟国の中で最も高い割合を負担」という説明はその通りだ。試算では駐留経費の負担割合は2015年度で実に86・4%に上る。韓国やドイツなどの他の米同盟国に比べ突出していることを改めて指摘しなければならない。
日本は米軍基地の光熱費や基地従業員の給与、施設整備費なども負担している。日米地位協定上、本来は米側が出すべき分野でも解釈拡大や特別協定の締結などによって支出を拡大させてきた。
駐留経費負担は19年度予算で約1974億円。このほかにも基地周辺対策費や米軍用地の借料、漁業補償、辺野古の新基地建設を含む米軍再編経費や日米特別行動委員会(SACO)関連経費、基地交付金など在日米軍関係経費の総額は約8千億円に達するといわれている。
米側の求めに応じて日本国民の負担をさらに拡大させるような過ちはもう許されないことは当然だ。一方でトランプ氏はこれまで日米安保条約について「不公平な合意だ」とたびたび不満を述べている。米国による日本防衛義務が、片務的で不公平だと言いたいようだ。
だが日本の経費負担に支えられた広大な米軍基地の自由使用によって米国がアジア太平洋地域への影響力を長年行使し、さらには世界戦略の拠点としてその機能を強化させてきた歴史をトランプ氏はどれだけ知っているのか。まして、沖縄がその犠牲となり戦後74年たった今も過重な基地を負担し続けている状況など理解していないだろう。
日本政府はこの機会に、対米従属姿勢から脱却して健全な「同盟関係」を構築する方向にかじを切り、虚心坦懐(たんかい)に米側と協議すべきである。そしてその中で、特定地域に安全保障の負担を集中させている異常な状態の解消を優先させるべきなのは言うまでもない。