日米安保変更発言 沖縄の不公平こそ解消を - 琉球新報(2019年7月1日)

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トランプ米大統領日米安全保障条約の見直しを公然と要求した。この際、沖縄の過重な基地負担を含めて、いびつな「同盟」の在り方そのものを見直してもらいたい。
日米安保条約は1951年に調印され、60年に全面改定された。第5条は日本の施政下への武力攻撃があった場合、米国が日本の防衛義務を負うと定めている。一方、第6条では日本と極東の安全へ寄与するため米軍は日本国内の施設・区域を使用できるとして、日本による米軍への基地提供義務を規定している。
この内容についてトランプ氏は29日の記者会見で「不公平な合意だ」と述べた。その上で日本の防衛義務を負う米国の負担が一方的だとの不満を安倍晋三首相に「この6カ月間言ってきた」と明らかにし「(条約を)変えなければならないと伝えた」と語った。
トランプ氏は米国による日本防衛義務は片務的で不公平だと言いたいようだ。だが日本の基地提供義務に伴う沖縄への負担の偏在はおそらく理解していないだろう。
住民の4人に1人が犠牲となった苛烈な沖縄戦の結果、沖縄は米軍に軍事占領され、強制的に奪われた土地に基地が建設された。戦後の米施政権下時代には日本本土から海兵隊の部隊が移駐され、基地の集約が進んだ。
今も沖縄には在日米軍専用施設面積の7割が集中している。基地から派生する事件・事故は後を絶たず、米軍人・軍属の優越的地位を保証する日米地位協定の存在が、米軍駐留に伴う諸課題の解決に大きな壁となり続けている。
この沖縄の不公平の解消こそ両国が最優先で取り組むべき課題ではないのか。特定の地域が軍事負担の重荷を長年背負って成り立つ2国間関係の本質と今こそ正面から向き合ってほしい。
トランプ氏は日米安保条約の必要性に関しては「破棄は全く考えていない」と説明しており、今回の発言には、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の増額を迫る狙いがあるとも指摘される。今後の貿易交渉で圧力をかけるための材料だとの見方もある。
防衛省の試算によると米軍駐留経費の日本側の負担割合は2015年度で86%にも達し、韓国やドイツなどの他の米同盟国に比べて突出している。一方で沖縄などの在日米軍の活動範囲は世界各地に広がっており、第一義的に米国の国益のために駐留していることは自明である。
菅義偉官房長官は30日、トランプ氏の発言について日本側に直接伝えられたものではないと説明した。そうであれば抗議してもおかしくないはずだが、米側に真意をただす考えは「全くない」という。これが「同盟」の現実だ。
沖縄の過重負担の解消と日米安保の在り方を米側と率直に議論する好機として、今回の発言を生かしたい。それは米国との主従関係を乗り越える第一歩ともなるはずだ。