(筆洗) 法王フランシスコがあす日本に来る - 東京新聞(2019年11月22日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019112202000156.html
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ローマ法王フランシスコが使う車はフォードの小型車フォーカスという。価格は日本円で百五十万円ほどらしい。大型高級車という前例は踏襲しなかったそうで、先日も、イタリアの生活困窮者の施設に予告なくこの車で現れている。
法王に就任した時にあつらえる指輪も通例と違い金製ではない。銀製ながら金メッキである。欧州紙によると胸の十字架も歴代のような金銀製と違い、古い鉄製を使い続けた。豪華な宮殿住まいを拒み、簡素な部屋に住んで…
質素、清貧にまつわる逸話を探せば、尽きることがない人だ。貧しい人や弱い人の側に力を与えるような数々の言葉に説得力をもたらしていよう。ネット上で数千万人がフォローしている。共感は地球規模だ。
空飛ぶ法王と言われたヨハネ・パウロ二世は、東西に分断された冷戦の世界を飛び回り、国際社会を動かした。法王フランシスコは、格差という線によって分断されている世界で抑圧される弱い側、傷ついた側に立つようである。
そんな法王フランシスコがあす日本に来る。ヨハネ・パウロ二世以来三十八年ぶりの法王来日だ。
日本のカトリック信者は多くない。「信仰や理想で人類は一致しないだろう。しかし慈善においては一致するはずだ」(英詩人ポープ)。広島や長崎を含め、わが国で清貧の人は何を見て、何を語るか。国外にも待っている人は多いだろう。