大学新テストの記述式 延期するしかないのでは - 毎日新聞(2019年11月13日)

https://mainichi.jp/articles/20191113/ddm/005/070/030000c
http://web.archive.org/web/20191113004636/https://mainichi.jp/articles/20191113/ddm/005/070/030000c

来年度から始まる大学入学共通テストで導入が予定される国語と数学の記述式問題について、採点の公平性などへの疑問から延期を求める声が強まっている。
現役高校生たちが約4万人分の署名とともに文部科学省に要請した。大学教授らでつくる団体は、共通テスト自体の延期を求める緊急声明文を同省に提出した。
共通テストを巡っては、英語民間試験が事実上の白紙撤回に追い込まれたばかりだ。これと記述式問題は大学入試改革の目玉だった。
思考力や表現力を測ることが導入の目的だ。知識偏重を見直そうとする理念自体は間違っていない。
だが、受験生50万人に対し1万人規模の採点者が必要となるため、公平に採点することの難しさが課題だった。マークシート式と比べて自己採点も難しく、実際の採点とのズレが生じやすい。受験生は自己採点に基づいて出願先を決めるため、ズレが重大な影響を与えかねない。
これまで2回の試行調査が実施された。国語の場合で採点のぶれが生じたのは1回目で0・2%、2回目も0・3%と改善は見られなかった。受験生50万人の場合、1500人が間違った採点をされる計算だ。自己採点と実際の採点の不一致率は1、2回目とも3割程度に上った。
その後も改善策は示されていない。むしろ、採点者に学生アルバイトも加わる可能性が国会などで取り上げられ、受験生らはいっそう不安を募らせている。
試行調査の国語の問題では、正答とみなす基準が細かく定められた。それを徹底すれば採点のぶれはある程度抑えられるだろうが、記述式本来の目的からは離れていく。
そもそも50万人を対象として一斉に記述式を実施することに、やはり無理があるのではないか。英語民間試験と合わせ、もはや共通テスト自体の制度設計に疑問が投げかけられている。
それでも文科省は導入の構えを崩していない。採点業務を受託した業者が先日、採点訓練を行ったものの、もう試行調査の予定はない。このまま見切り発車するのは無謀だ。
受験生が「実験台」にされかねない以上、現状では延期するしかなかろう。