米軍の違反飛行 規律の乱れ放置するな - 東京新聞(2019年11月6日)

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手放し操縦や飛行中の読書など極めて重大な規則違反が、米海兵隊の戦闘機部隊であった。軍紀の緩みが墜落事故の原因だった可能性すらある。日本の主権に関わる問題だ。放置してはならない。
昨年十二月、高知県沖の太平洋上で米海兵隊岩国基地山口県岩国市)所属のKC130空中給油機とFA18戦闘攻撃機が夜間の空中給油中に接触、墜落し、一人が死亡、五人が行方不明となった。
事故の深刻度を示す四分類のうち最も重大な「クラスA」の事故である。直接の原因について米軍関係者は当初、FA18の操縦士が十分な空中給油訓練を受けておらず、機体の高度や姿勢の状況が分からなくなり、KC130に接触した、と結論付けていた。
しかし、戦闘機部隊の上部組織である第一海兵航空団(沖縄県)の指示に基づく調査報告書によると、この部隊で手放しの操縦や飛行中の読書、ひげを整えながらの自撮りなど重大事故につながりかねない規則違反が横行していた。また乗員二人の尿から睡眠導入剤の成分が検出され、飛行任務に不適格だった可能性もあった。
また報告書は二〇一六年四月に起きた沖縄県沖上空でのFA18とKC130との接触事故も調査対象とし、いずれも、同じ戦闘機部隊所属のFA18側に責任があり、背景に「薬物乱用、アルコールの過剰摂取、不倫、指示違反といった職業倫理にもとる実例」が部隊内に存在した、と指摘した。
規律が重視される軍隊での、驚くべき軍紀の乱れである。
第一海兵航空団は調査後、隊長ら四人を更迭したというが、綱紀粛正は当然である。規律の徹底が確認されるまで、戦闘機部隊の飛行は中止すべきではないか。
さらに深刻な問題は、一六年の接触事故について、これまで本格的な調査が行われず、日本側への報告もなかったことだ。
接触した二機は嘉手納基地(沖縄県)に順次着陸し、けが人はいなかったため、事故の深刻度は四分類の下から二番目とされた。このとき本格的に調査され、再発防止策が徹底されていれば、墜落事故は防げたのではないか。
日本の空を、薬物やアルコールの影響を受けた、訓練不足のパイロットが操縦する米軍機が飛び回る事態を許してはならない。
日本の主権に関わる問題でもある。政府は、日米安全保障体制をも脅かす重大事と受け止め、米側に規律の徹底と再発防止を、強く申し入れるべきである。