米軍が事故公表せず 地位協定改定しかない - 琉球新報(2019年11月4日)

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一つの事故をうやむやにしたために、事故の連鎖を生み、人命を失った。地域に損害を与え、市民を危険にさらしている。
海兵隊岩国基地所属部隊が2016年4月に、嘉手納基地沖の上空で戦闘機と空中給油機の接触事故を起こしながら公表せず、正式な調査も見送っていた。米軍の報告書で明らかになった。
報告書は18年12月の高知県沖の墜落に状況が類似していると指摘するが、同様な事故はそれだけではない。
16年12月に名護市安部で起きた米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの墜落も夜間の空中給油中の事故だ。両事故とも嘉手納基地沖の事故がきちんと検証されていれば防げたのでないか。米軍の隠ぺい、怠慢の罪は重い。
嘉手納基地沖の事故は第242(全天候)戦闘攻撃中隊のFA18戦闘攻撃機が、別部隊のKC130空中給油機と米軍嘉手納基地沖で接触し、給油ホースを引きちぎった。FA18の操縦士が月明かりのない暗闇で初めて空中給油を受けている最中に起きた。操縦士が機体の高度や体勢を把握できなくなる失調状態に陥ったという。米軍はこの事故を日本側に報告しなかったばかりか、本格的な調査もしなかった。
同年12月には名護市安部でオスプレイ墜落事故が起きた。オスプレイは夜間、MC130空中給油機から給油口への接続を試みた際、オスプレイの右のプロペラが給油口に接触し損傷した。
高知沖墜落事故も同じく夜間の空中給油訓練中に起き、1人が死亡、5人が行方不明という犠牲を生んだ。
米軍はいずれの事故も原因は操縦士の人為ミスと結論付けているが、本当にそうだろうか。報告書は「(嘉手納基地沖で)調査していれば(高知沖は)防げた可能性がある」と内部批判しているが、当然だ。あまりにもずさんで、人の命を軽んじているとしか思えない。
報告書はさらに恐ろしい問題を挙げている。相次ぐ事故の背景として、部隊内に「薬物乱用、アルコールの過剰摂取、不倫、指示違反といった職業倫理にもとる実例」があると指摘したのだ。このような規律意識の低い部隊が県民の頭上で日常的に訓練を繰り返しているのでは、事故は起こるべくして起こったと言わざるを得ない。
国内で起こった事故でありながら、日本側が事故を把握できない日米地位協定が問題だ。米軍と地位協定を結ぶドイツやイタリアでは事故時の通報体制が整っているが、日本では米軍の裁量に任されている。
日本政府は速やかに日米地位協定を改定し、自国内で起きた事故の通報体制を米側に義務付け、捜査にも関与できるようにするべきだ。規律の緩みきった米軍に再発防止はできない。