<くらしデモクラシー>民権運動は憲法知るヒント 全国で再研究の動き - 東京新聞(2019年11月3日)

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明治時代の自由民権運動を見直す動きが高まっている。全国各地で研究する個人・団体が昨年末に「全国自由民権研究顕彰連絡協議会(全国みんけん連)」を結成、十月中旬に都内で第一回の全国大会も開かれた。今なぜ、自由民権運動なのか。日本国憲法が公布された十一月三日に合わせ、明治時代の民間憲法草案「五日市憲法」を発見した同協議会顧問、新井勝紘・元専修大教授(75)に聞いた。 (竹谷直子)

「民権運動を学ぶことは、何のために憲法があるかに立ち返ることにつながる」。東京都福生市の自宅で、新井さんは切り出した。自由民権運動は、明治維新後の薩長政治に抗し、憲法制定や議会開設を求めた運動。全国各地で独自の憲法草案(私擬憲法)もつくられ、それぞれの地域で研究や顕彰が進められている。
全国みんけん連は、各地の研究者や民権家の子孫など約四十の個人・団体が昨年末に結成。年に一度開く大会を中心に情報交換や交流を図り、自由民権運動の意義を共有する。根底にあるのは、政権による「上から」の憲法改正議論への危機感という。
新井さんは「憲法は政府が作って国民に守らせるものではなく、国民が政府に守らせるもの。それを理解している国民は少ないのではないか」と話す。
大学生だった新井さんが一九六八年に五日市町(現東京都あきる野市)の民家の土蔵で見つけた「五日市憲法」からは、憲法によって、人々を権力から守ろうとした先人たちの強い思いが読み取れる。二百四条もある条文の多くは、言論の自由など国民の基本的権利に割かれており、現行憲法にはない「教育の自由」なども明記されている。
新井さんは「自由民権運動で生まれた民主主義の源流が、現行憲法につながっている」として「押しつけ憲法」論を一蹴。「押しつけと言うなら、極秘裏に作られ発布された明治憲法こそが押しつけ憲法だろう」
今、国民一人一人が、いやが応でも憲法を考えなくてはいけない時期にきているとみる。自由民権運動はそのヒントになる。「政府が提案するものを受け入れるのか、そうでないか。今日流に私たちの自由や人権を考えてみる必要があるのではないか」と訴えた。