改憲「もっと国民的論議を」=「五日市憲法」研究者が指摘−草案発見から50年 - 時事通信(2018年8月26日)

https://news.nifty.com/article/domestic/society/12145-077568/
http://archive.today/2018.08.27-003648/https://news.nifty.com/article/domestic/society/12145-077568/

明治時代に作られ、現在の日本国憲法にも匹敵する民主的な内容を含むことで知られる民間の憲法草案「五日市憲法」が発見されてから27日で50年。当時東京経済大の4年生で、最初に草案を見つけた元専修大教授(日本近代史)の新井勝紘さん(74)は「当時は憲法を政府に守らせるという立憲主義の意識が強かった。改憲が政治の争点になる中、国民の側でもっと憲法論議が必要だ」と指摘する。 歴史家の色川大吉教授(現名誉教授)のゼミに所属していた新井さんは1968年8月27日、調査に入った東京都五日市町(現あきる野市)の旧家の土蔵で、箱に入った和紙24枚つづりの草案を手にした。「最初は大日本帝国憲法を書き写したものだと思っていた。まさか全くのオリジナルとは」。内容を卒論にまとめた後はそのまま歴史研究の道に進み、以来50年間、五日市憲法が生涯の研究テーマとなった。 当時は国会開設や憲法制定を求める自由民権運動の隆盛期。第2回国会期成同盟大会(1880年)の決議に従い、五日市憲法以外にも各地で民権結社による憲法草案が作られた。 こうした草案は審議には至らず、実際の憲法に内容が反映されることもなかった。しかし、新井さんは「国民が国の在り方を自分たちで考え、提言した。当時と同じくらいの情熱とパワーが今のわれわれにあるかというと、負けるのではないか」とみる。 五日市憲法をめぐっては、皇后さまも2013年の誕生日に「近代日本の黎明(れいめい)期に生きた人々の政治参加への強い意欲や、自国の未来にかけた熱い願いに触れ、深い感銘を覚えた」と言及され、話題になった。 安倍晋三首相は自民党憲法改正案を秋の臨時国会に提出したい意向だが、新井さんは「絶対変えてはいけないということはないが、憲法は身近な生活に直結する。それをきちんと理解した上で判断しなければ。国民の側がもっと憲法を学ぶ必要がある」と語った。