授業再開 子どもに元気取り戻そう - 信濃毎日新聞(2019年10月30日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191030/KT191029ETI090003000.php
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台風19号の影響で休校が続いていた長野市の4小中学校のうち、豊野西小が自校での授業を再開した。子どもたちが見せる笑顔や元気な声は、被災地の励みになる。
豊野中も3年生が他校で教室を借りて授業を始めた。東北中は31日に授業を再開する予定だ。長沼小は隣の柳原小の教室を借りて自由登校を続けながら、授業再開を目指している。
被災した学校は、校舎の損壊や学習の遅れ、子どものストレスと多くの課題を抱えている。現場の教員たちや教育委員会は、子どもたちに元気を取り戻してもらうことを第一に、復旧の歩みを進めてほしい。
2週間ぶりの授業となった豊野西小では、子どもたちから「楽しかった」「頑張りたい」の声が聞かれた。一方で、いつもと違う学校の様子を感じ、被災状況を詳しく語ることを避け、お互いを思いやる様子もみられたという。
各校とも被災後、教員が各家庭や避難先を訪ねて、子どもの心身の把握に力を尽くしてきた。教育委員会は、不安を抱える子どものケアにスクールカウンセラーを派遣している。
子どもが受けた被災は一つ一つ異なっている。自宅が浸水し壊れた子、遠くへ避難した子、家の周辺が一変した子、親の職場が被災した子…。明るく振る舞ったり、静かになったりと、感じ取り方もそれぞれだ。
各家庭の状況をしっかりとつかみながら、一人一人と丁寧に向き合うことは欠かせない。自分だけが取り残されているといった気持ちを抱かせないよう気を配り、見守っていくことも肝心だ。
4校以外の学校でも通学が困難な児童生徒は多い。今後、各地で学校生活が通常に戻っていく中、教職員が子どもにどう接するかは大きな課題になる。
子どもの気持ちをおもんぱかりすぎて、災害について語ることを避けるようになってしまうのもよくない。
1995年の阪神大震災を経験した兵庫県は7年後、全国で初めて県立高校に「環境防災科」を設けた。防災技術や知識の習得とともに、復興への強い意志を育てることを柱に据え、多くの人材を送り出している。
未来を担う子どもたちに、防災学習は必要だ。自分たちの周りで何が起きたのか、自分たちにできることは何か。教室で災害を教え学ぶ大切さも、心に留めておいてほしい。