気候サミット 若者の怒りに目を覚ませ - 信濃毎日新聞(2019年9月25日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190925/KP190924ETI090011000.php
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「あなたたちには失望した」「決して許さない」。16歳の少女が各国の首脳を前に発した言葉、怒りに満ちていた。
地球温暖化対策の強化を訴えるスウェーデンのグレタ・トゥンベリさんが国連の気候行動サミットで行ったスピーチだ。
対策に消極的で、安倍晋三首相が出席すらしなかった日本は痛烈な非難を浴びたといえる。しっかりと受け止め、反省と行動につなげねばならない。
トゥンベリさんは昨年8月、授業をボイコットしてストックホルムの議会前で座り込みを開始。毎週の「学校スト」は世界中に共感を広げた。サミット前の一斉抗議はアジア、中東、欧州、北米、中南米に拡大し、各地の参加者は数千から10万人規模になった。
彼女が怒りを向けるのは、危機を口にしながら問題を先送りしている大人たちの「欺瞞(ぎまん)」だ。
2016年に発効したパリ協定は来年に本格始動する。温室効果ガス排出を今世紀後半に実質ゼロにし、気温上昇を産業革命前から2度未満、できれば1・5度に抑える目標を掲げる。
現実は逆だ。18年の二酸化炭素(CO2)排出量は前年より増えて過去最多だった。平均気温はこの5年間で産業革命前より1・1度も上昇した。
消極姿勢が鮮明な米トランプ政権は協定から離脱。安倍政権も長期戦略の中で石炭火力発電の利用を堅持し、国際的な流れに逆行する。排出削減策も今後の技術革新への期待にとどまる。
トゥンベリさんは批判する。「あなたたちが空気中に出した何千億トンもの二酸化炭素を、私たちの世代が、(現時点で)ほとんど存在していない技術で吸収することを当てにしている」と。
サミットでは危機意識の高まりから77カ国が協定より進んで「50年までに排出ゼロ」の目標を表明したが、日本は加わっていない。
出席した小泉進次郎環境相には演説の機会もなかった。別の会合で「脱炭素へ今日から変わる」と述べたが、政策は示さなかった。会見では「気候変動問題はセクシーに」と発言して物議を醸している。世界が直面する現実と、日本への視線の厳しさを理解しているとは思えぬ「軽さ」だ。
今必要なのは美辞麗句ではなく具体策である。削減目標を見直し、効果が確かな施策を早急に打ち出さねばならない場面だ。
少女の怒りは私たち一人一人に向けられている。世論の高まりと行動で政府を動かしたい。