神戸市で教員いじめ 信じがたい劣化を憂える - 毎日新聞(2019年10月13日)

https://mainichi.jp/articles/20191013/ddm/005/070/046000c
http://archive.today/2019.10.13-002601/https://mainichi.jp/articles/20191013/ddm/005/070/046000c

学校や教員への信頼を揺るがす、信じがたい不祥事である。
神戸市の公立小学校で複数の教員が集団で若い教員に悪質ないじめを繰り返していた。子供のいじめ問題が深刻な中、根絶の先頭に立つべき教員による犯罪的な行為だ。
30代の男性教員3人と40代の女性教員によって、20代の男性教員が標的にされた。羽交い締めにされ激辛カレーを無理やり食べさせられ、汁を目にこすりつけられた。同僚女性に性的なメッセージを送信させられる精神的な辱めも受けていた。
被害教員は自分が担当する児童に対し女性教員が「反抗して学級をつぶしたれ」とけしかけたと証言する。子供まで「いじめ」に巻き込もうとしていたなら言語道断だ。
なぜこんなことが起き、しかも対応が遅れてしまったのか。経緯を徹底調査し、いじめに加担した教員を厳正に処分すべきなのは当然だ。
被害教員は9月から出勤できなくなった。家族が市教委にパワハラの被害を訴え、初めて実態の一部が明らかになった。
いじめは前校長時代の少なくとも昨年からあり、今年2月と7月に指導が行われたが、市教委には報告されなかった。神戸では校長同士で協議し、個別の教員の人事異動を決めることができる方式が取られている。こうした人事体系が閉鎖的な環境を助長した可能性もある。
市教委の対応にも疑問がある。いじめに加担していたとされる男性教員は過去に児童を押し骨折させる事故を起こしていたが、口頭で注意しただけだった。
市長は市教委が学校の実態を把握できていない点も「統治能力の欠如」と批判した。市教委に任せず市が調査を主導するのはやむを得まい。
外部の目が届きにくい職員室で若手教員が孤立する恐れはどこの学校でもある。公立学校で精神疾患による病気休職は5000人前後に上る。教職員間のトラブルによるものもあるのではないか。
学校現場は近年、教員の過重負担が指摘されている。そうした中で教員の倫理と質が劣化し、底割れしそうになっているのではないか。他の学校でも教員によるいじめやパワハラがはびこっていないか、国や自治体は実態把握を急ぐべきだ。