大川小判決の確定 学校防災支える仕組みを - 毎日新聞(2019年10月12日)

https://mainichi.jp/articles/20191012/ddm/005/070/096000c
http://web.archive.org/web/20191012010548/https://mainichi.jp/articles/20191012/ddm/005/070/096000c

東日本大震災津波で84人の児童らが犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校の裁判で、学校や市教育委員会の防災対策の不備を明確に認めた判決が確定した。
仙台高裁は昨年4月、石巻市宮城県に約14億円の賠償を命じた。市と県は上告していたものの、最高裁が退ける決定を出した。
子どもの安全を確保すべき義務がある学校側に、防災上の重い責任を課した判断だ。判決が確定したことで、各地の学校や教育委員会は対策の早急な見直しを迫られる。
判決は校長らが事前の情報収集で津波を予想できたと指摘し、危機管理マニュアルに具体的な避難先や経路を記していれば被害は防げたと結論づけた。市教委についても、マニュアルの是正指導を怠ったことから賠償責任を負うと判断していた。
震災後、学校防災の強化は道半ばにある。
毎日新聞は昨年8、9月、南海トラフ巨大地震などで津波被害を受ける恐れがある176市町村教委に、判決が求めるような対策をしているかを尋ねた。
28%が「実施済み」、16%が「検討する」と答えた一方、20%は「現実的に困難」と回答した。36%は判決が確定していないといった理由から「その他」「無回答」だった。
困難な理由には、教職員に専門知識がないことなどが挙げられた。判決に対し、教育現場からは負担の重さを不安視する声が上がった。
しかし、大川小の悲劇を繰り返してはならない。学校の取り組みに加え、周囲が支える仕組みが必要だ。
防災対策の前提となる科学的見解や知識、経験を蓄積していくには、学校と教育委員会が緊密に情報交換することが重要になる。人的支援も含めて、国や都道府県の積極的な関与も求められる。
地域との連携も欠かせない。避難時には住民の協力を必須とする場合があると同時に、学校は災害時に住民の避難場所にもなる。日ごろから、地域ぐるみで防災や避難の訓練を行うことも大切になる。
学校は「災害弱者」である子どもたちを預かっている。常に最新の情報を集め、立地状況に対応した災害への備えに万全を期していかなければならない。