安倍改造内閣 多様な声取り込めるのか - 信濃毎日新聞(2019年9月12日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190912/KP190911ETI090006000.php
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安倍晋三首相がきのう、第4次再改造内閣を発足させた。
19閣僚のうち、17人がポストを交代し、初入閣は安倍内閣で最多の13人となる。官房副長官や首相補佐などとして、首相に仕えた側近が目立っている。
これまで政権を支えてきた麻生太郎副総理兼財務相と、菅義偉官房長官は続投させた。
一方で昨年の党総裁選で安倍首相の対立候補となった石破茂元幹事長や石破派からの閣僚登用は見送った。政治信条が近い「身内」を集めた内閣といえる。
社会保障や財政改革、経済、外交など課題は山積している。異論を含めた多様な意見に耳を傾け、真正面から取り組む必要があるのに対応できるのか不安が残る。これまでと同様の強引な手法をとらないか、政権がどこに向かうのか、注視していく必要がある。
環境相には小泉進次郎氏を充てた。抜群の知名度があるものの、手腕は未知数だ。将来の首相候補とも目される若手を取り込み政権浮揚を図りたいのだろう。「身内」を集めた内閣の本質を覆い隠したい思惑も透ける。
安倍首相はきのうの記者会見で「新しい時代の国づくりを力強く進めていくための布陣を整えた」と述べている。憲法改正に挑戦するとも表明し、「困難でも必ず成し遂げる決意」と強調した。
自民党役員人事は、二階俊博幹事長と岸田文雄政調会長を再任するなど主流派の派閥バランスに配慮した。憲法改正に向け党内の混乱を避ける狙いもあるのだろう。
最優先で取り組むべき課題は憲法改正ではなく、社会保障だ。
11月には歴代最長政権になる。長期的な視点で構造的な問題の解決を目指すことができたはずだ。実態は異なる。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始める「2022年問題」が迫る。社会保障給付が増え、財政運営がさらに困難になる。それなのに政府は経済財政運営の指針「骨太方針」で医療などを含む社会保障全般の改革を20年度に先送りした。
政府が目標に掲げる25年度の基礎的財政収支の黒字化は達成できるのか。費用の抑制策や税・保険料負担の在り方を、長期的な視野で検討しなければならない。
泥沼化している日韓関係のほか、北朝鮮北方領土問題も先行きが見通せない。停滞傾向がみえる経済も10月の消費税増税後の動向に注意が必要だ。
国の行く末を左右する重要な問題だ。内閣の力量が問われる。