(政界地獄耳) 民主主義を守る努力に敬意を - 日刊スポーツ(2019年8月14日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201908140000052.html
http://archive.today/2019.08.14-010609/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201908140000052.html

★日本ではまもなく74回目の終戦記念日を迎えるが、欧州では全く別の形の終戦の追悼式が開かれる。ドイツでは7月20日、第2次大戦末期のナチスではドイツ軍将校らによるヒトラー暗殺未遂事件が起きてから75年となり、ベルリンで式典が開かれた。民主主義を取り戻すための抵抗としてたたえられている。トム・クルーズ主演で映画化された「ワルキューレ」がまさにこの事件だ。

★暗殺に失敗した将校らが射殺された場所にドイツのメルケル首相が花輪をささげ「不服従が義務となり得る瞬間がある。75年前に抵抗した人たちは、他の人たちが黙っているときに行動した。状況が完全に異なっているとはいえ、今日の私たちにとっての模範だ」とあいさつした。

★今月2日、大戦末期のポーランドの首都ワルシャワを占領下においていたナチスに対して解放と戦後の独立を求めて市民が反乱を起こし、約2カ月間で20万人が犠牲になった「ワルシャワ蜂起」から75年を迎え、敬意と追悼の式典が開かれた。ドイツのマース外相もポーランドのチャプトウィチ外相と市内のワルシャワ蜂起博物館を訪れた。マースは「ポーランドに対してドイツ人が行ったこと、ドイツの名の下、ポーランドに対して行われたことを恥じている」と許しを乞うた。

★民主主義を守ろうとする人たちの努力に敬意を払う発想に我が国は欠けていないか。今でも民主主義はさまざまな形で蹂躙(じゅうりん)されている。戦後生まれが歴史を知らないことを利用するかのように歴史修正主義者が100年余りの近代史を作り替えようとしている。政府や国民は往々にその言動を否定的に評するが、我が国でも元首相・鳩山由紀夫が6月12日、ソウルの延世大学で講演し「日本は戦争で傷つけた人たちや植民地にしていた方々に対し『これ以上謝らなくてもいい』と言ってくれるまで、心の中で謝罪する気持ちを持ち続けなければならない」と発言している。大切な思いはないか。(K)※敬称略