(政界地獄耳)「民主主義の死に方」防ぐために - 日刊スポーツ(2019年1月12日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201901120000069.html
http://archive.today/2019.01.12-010533/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201901120000069.html

★日本の政治は閉塞(へいそく)感にさいなまれているが、これは日本だけの現象ではない。ではそこから抜け出すにはどうしたらいいか。昨年秋に出版された「民主主義の死に方 二極化する政治が招く独裁への道」(スティーブン・レビツキー ダニエル・ジブラット、濱野大道訳 新潮社刊)にはその処方のヒントがある。

★軍事クーデターによって民主主義が消えた国はあるものの、もうひとつ、選挙で選ばれた指導者によって民主主義が死ぬこともあると本書は指摘する。ベネズエラアメリカ、ジョージアハンガリーニカラグア、ペルー、フィリピン、ポーランド、ロシア、スリランカ、トルコ、ウクライナ、チリなどが挙げられているが、日本はどうだろうか。また本書は独裁主義的な行動を示す4つのポイントを示している。(1)ゲームの民主主義的ルールを拒否(あるいは軽視)する(2)政治的な対立相手の正当性を否定する(3)暴力を許容・促進する(4)対立相手(メディアを含む)の市民的自由を率先して奪おうとする。

★そしてそれらと戦う野党の役割について「過激主義者が選挙の強力な対立相手に浮上した時は、主流派の政党はいつでも統一戦線を張って相手を倒さなくてはならない。主流派はイデオロギーの異なるライバルと組んででも民主主義的な政治秩序を積極的に守らなくてはならない。そんな方策を取れば道義的に許されない行為だと支持者から非難の声が上がるはずだ。しかし異常な状況下においては、党指導者たちは時に勇敢な行動をとる必要がある。彼らは政党よりも民主主義と国家を優先し、どんな危機が起きているかを有権者に詳しく説明しなくてはならない」としている。今の野党には民主主義の危機という視点が欠けてはいまいか。今までの政治と違う動きに対応できず、判断できない野党へのヒントがくみ取れないようでは日本の民主主義の行方も案じざるを得ない。(K)※敬称略

民主主義の死に方:二極化する政治が招く独裁への道

民主主義の死に方:二極化する政治が招く独裁への道