<’19参院選>若者の将来 希望を語っているか - 東京新聞(2019年7月13日)

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人が生きていくには、未来に「希望」が必要だ。それを持てる社会の将来像を知りたいが、各党の公約にその姿が明確に見えない。
年金制度は、それを支える子や孫世代の問題でもある。制度への無関心は若者の現状を顧みないこととも言える。将来世代の負担と給付についても具体的に語るべきだ。そうでなければ若者たちの年金不信は消えないだろう。
若者への支援は働いて自立できる雇用の安定が大きな課題だ。
確かに好景気下で正社員として働く若者は増えた。それでもブラック企業で過重労働に苦しみ退職を迫られる人がいる。辞めてしまうと正社員の職を得ることが難しい状況は大きく変わっていない。
正社員でも保育所不足や長時間労働、転勤などで仕事と生活の両立は依然として困難だ。働き方の見直しを進めないと働く魅力を感じられないのではないか。
一方でバブル経済崩壊後、企業は終身雇用を守るため新入社員の採用を絞った。就職氷河期世代はその影響を受けた。非正規雇用を選ばざるを得ない人がいた。
非正規は増えている。総務省によると十五~六十四歳の正社員数は二〇一八年で約三千四百万人だが、非正規は約千八百万人いる。
非正規は雇用が不安定な上、技能向上の機会が少なく正社員の職は限られる。子育て支援は結婚・出産し働いている人への支援が中心で、未婚率が高い非正規の若者が取り残されている。結婚・出産をしたい人がそうしにくい社会になっている。
このままでは将来、低年金・無年金になる懸念がある。それは社会や社会保障を支える力の弱体化でもある。「自己責任」と思わず、もっと声を上げてほしい。
まずやるべきは非正規の待遇改善である。多くの党が最低賃金のアップを掲げる点は理解できる。
共産党は待遇改善のほか職業訓練の充実、失業給付の拡充などを、立憲民主党職業訓練の充実を訴える。与党も就職氷河期世代への就労支援を掲げてはいる。取り組むべき対策だが、成長産業の創出や、やりがいと安心を持てる多様な働き方の実現など社会変化に対応した中長期の課題に道筋を示しているだろうか。
若者は人手不足対策の単なる労働力ではない。人は技能を磨きキャリア形成の見通しを得ることで働く喜びと意義を感じる。それが可能な社会になって初めて希望が持てるのではないか。