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高齢者の働く場を確保するという段階から、意欲や能力を引き出す基盤づくりへ歩を進めてほしい。
政府の未来投資会議が、70歳まで働く機会を確保することを企業の努力義務とする方針を打ち出した。来年の通常国会に高年齢者雇用安定法改正案を提出する。
背景にあるのは、急速な少子高齢化による現役世代の激減だ。安倍政権が掲げる「生涯現役社会」の実現は、先細る労働力を確保し、社会保障費を抑制しようとの狙いもある。
現行法は、(1)定年の廃止(2)定年の延長(3)継続雇用制度の導入-のいずれかによって、希望者全員を65歳まで雇用するよう企業に義務付けている。
新たな方針はこの規定を維持した上で、70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする。(1)~(3)に加え、(4)他企業への再就職(5)フリーランス契約への賃金提供(6)起業支援(7)社会貢献活動への資金提供-といった選択肢の中から、労使が話し合って決める仕組みだ。
一昔前のお年寄りのイメージと違って、若々しく元気なシニアが増えている。培ってきた経験や磨いてきた専門性が生かせるよう長く働ける環境を整えることは重要だ。
自社にこだわることなく他社への再就職や起業支援などを盛り込んだのは、時代の流れを意識してのことだろう。社会貢献活動などは、時間にも心にも余裕のある高齢期の就労モデルとなり得るかもしれない。■ ■
2018年版高齢社会白書によると、働く65歳以上は年々増え、労働力人口に占める割合は12・2%まで上昇している。さらに現在仕事に就いている60歳以上の約8割が「70歳くらいまで、もしくはそれ以上働きたい」と答えるなど就労意欲も高い。
老後の経済不安から生活を支える目的で働いている高齢者が大半だ。ただ多くの企業は60歳定年を採用しており、再就職後の給与の大幅ダウンや経験のない部署に配置されるなど処遇に不満を持つ人は少なくない。
再雇用を巡っては、同じ仕事をしているのに賃金が下がったのは不当として、各地で格差是正を求める訴訟も起こっている。
企業の側からは人件費の増加を懸念する声もあるが、高齢者が欠かせない戦力となっている多くの事例に目を向けるべきだ。
働く高齢者の意欲を維持できるような人事評価や報酬体系など労働条件の整備を求めたい。■ ■
来年4月から、正社員と非正規労働者の不合理な待遇格差を認めない「同一労働同一賃金」が順次始まる。定年後の継続雇用も対象となる。
政府が示した70歳まで働く機会確保には、将来的な義務化の検討が明記されている。
原則65歳となっている公的年金の支給開始年齢は引き上げないとするものの、既に70歳以降も選択できる案が高齢社会対策大綱で打ち出されている。70歳雇用が受給開始年齢の引き上げにつながらないか注視していきたい。