<南風>「へいわ」今の時代は - 琉球新報(2019年7月2日)

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2万人以上が犠牲になった「東日本・津波原発事故大震災」から8年4カ月。福島県では、地震津波で亡くなった直接死が1605人。震災後に亡くなった関連死が2275人。被災3県(福島、宮城、岩手)の中で関連死が直接死を上回っているのは福島県だけだ。
震災関連死の主な原因は、原発事故による無理な避難からくるストレス、持病の悪化、そして自殺。これはもう「原発事故関連死」だと思う。関連死は今も止まらない。7月現在、全国に避難している福島県民は3万1千人。沖縄県には169人が避難中。原発も基地も国策として進められてきた現状に、福島と沖縄の共通の問題を感じる。
今から48年前、私が高校1年生の時、担任の野口先生が黒板に3つの「へいわ」を書いた。左から、「(1)平和」「(2)へいわ」「(3)兵は」だった。当時は、ベトナム戦争が激しさを増していた。私は米軍基地の町・神奈川県横須賀市で生まれ育ち、ベトナム戦争は身近な問題として捉えていた。
野口先生が言った。「今の時代は、(2)の平仮名の『へいわ』。これを(1)の『平和』にするのも、(3)の『兵は』にするのも、この国の将来を担う君たち若者の行動にかかっている」と。そして、野口先生は憲法9条の話を始めた。「この条文は『戦争の放棄』『戦力の不保持』『交戦権の否認』の3つの規範的要素から構成されており、日本国憲法を『平和憲法』と呼ぶのは、この第9条の存在に由来している」と。
そして42年前、私は縁あって福島県でラジオ局のアナウンサーになった。福島県は、日本国憲法草案に関わった鈴木安蔵の故郷。鈴木安蔵は、南相馬市小高区出身。令和元年5月3日(憲法記念日)、この日鈴木安蔵の生家を訪ね、復興と平和を祈った。令和が『兵は』の時代にならないようにと。
(大和田新、フリーアナウンサー