<金口木舌>DVと児童虐待は同じ家庭で - 琉球新報(2019年6月29日)

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元恋人から性暴力を受け、現在もPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいる女性の講話が忘れられない。数年前に取材した。女性は暴力を受けている最中、感情を切り離し思考を停止させた。その間は恐怖が和らいだと言う

▼恋人と別れた後、時折暴力を思い出し苦しんだ。「恐ろしさを冷凍庫で固めているような感じだったから、解放されると恐怖が溶け出してきた」と語った
▼千葉の小学4年生の女児が死亡した虐待事件で、傷害ほう助罪に問われた母親に重なった。判決理由によると、父親から暴力を振るわれた女児は母親に救いを求めた。だが、母親は家族関係の存続を図るため、目を背けた
▼母親は夫でもあるこの父親からDVを受けていた。法廷で女児の気持ちを考えなかったのかと問われ「考えたが、旦那に怒られると思った」と答えた。千葉地裁は母親に、懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年を言い渡した。父親の暴行を制止しなかったことを理由に挙げた
▼父親から暴力を振るわれ、母親から見放された。女児の気持ちを思うと胸が張り裂けそうになる。弁護士からは、母親の逮捕・起訴を疑問視する声もある
▼DV被害と児童虐待は同じ家庭の中で発生しやすいといわれる。母子ともに保護できなかったのかと考えずにいられない。救える場所をつくる責任は社会の側にある。