(斜面) 国民全体が自ら当事者であるとの認識 - 信濃毎日新聞(2019年6月24日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190624/KT190623ETI090001000.php
http://archive.today/2019.06.24-011602/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190624/KT190623ETI090001000.php

<一発の手榴弾(てりゅうだん)のまわりに家族や親戚がひとかたまりに集まりました。手榴弾は日本軍から防衛隊員に渡されていたものです。やがて、その手榴弾があちらこちらで轟音(ごうおん)をたてて爆発しました>。74年前、沖縄で強いられた集団自決だ

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国場幸太郎さんの著書「沖縄の歩み」から引いた。戦後、沖縄で米軍の土地接収に対する抵抗運動の支援などに尽くした人だ。故郷の沖縄を含め、日本の若い人に語り伝えたいと1973年に刊行した。米軍統治下での自由や権利の抑圧も詳述している

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現状を言い当てたかの一節が目を引く。土地闘争などの鎮圧には米兵が出動したが<これからは“日本仕込み”の警察機動隊がまず出動>し、<アメリカ軍基地は一段と安全に保たれるというわけです>。米軍普天間飛行場の移設先として工事が進む名護市辺野古の光景に重なる

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きのう23日は沖縄戦で旧日本軍が組織的な戦闘を終えた日とされる「慰霊の日」だった。沖縄全戦没者追悼式で玉城デニー知事は、辺野古を断念するよう政府に迫った。工事強行を「民意を尊重せず、地方自治もないがしろにするもの」と批判している

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「基地負担軽減に全力を尽くす」とする安倍晋三首相との溝は埋まらない。国土面積の1%に満たない沖縄に米軍専用施設の70%余が集中するいびつな状況は沖縄だけの問題ではない。「国民全体が自ら当事者であるとの認識を持っていただきたい」。ずしりと響く玉城知事の訴えである。

 

 

沖縄の歩み (岩波現代文庫 社会 313)

沖縄の歩み (岩波現代文庫 社会 313)