沖縄県敗訴 構図のゆがみ地方が正せ - 信濃毎日新聞(2020年3月30日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200330/KT200327ETI090011000.php
http://archive.today/2020.03.31-003253/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200330/KT200327ETI090011000.php

納得がいかない。
米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、沖縄県が「埋め立て承認撤回」の効力回復を求めた訴訟の上告審判決が出た。最高裁は上告を棄却、県が敗訴した。
県民は繰り返し基地建設に反対の民意を示している。辺野古の予定地では軟弱地盤が見つかり、安全性が疑われるほか、工期や工費の膨張が避けられなくなった。
法解釈をねじ曲げてまで計画を強行する政府を、国会も司法も止められずにいる。
県は一昨年8月、辺野古沿岸の埋め立て承認を撤回した。防衛省行政不服審査法を使って不服を申し立てると、国土交通相は昨年4月、県の決定を取り消した。
審査法は、国の機関が一般私人では得られない「固有の資格」の立場で受けた処分には、不服申し立てができないと規定する。そもそも防衛省に申し立てができるのか、が争点になった。
最高裁は、私人でも埋め立て工事の実施主体になれるとし、要件やルールが異ならない場合は、国の機関であっても申し立てができると結論付けた。
審査法は行政の不当な権限の行使から国民を守るためにある。国の機関が私人に成り済まし、不服審査の審判員も兼ねる茶番を最高裁が認めたも同然だ。
ただ、辺野古の埋め立て自体が承認されたわけではない。
軟弱地盤が確認されたことで、辺野古基地建設の工期は当初の5年から9年3カ月に延びる。7万本以上のくいを海底に打ち込む必要から、工費も3倍近い9300億円にはね上がる。
政府は70メートルより深い地盤は安定していると説明していたのに、それより深い海底地盤も軟弱な可能性が指摘されている。
政府は「信頼に値しない」として取り合わない。有識者会議を通じて理論武装し、4月中にも軟弱地盤改良に向けた設計変更を沖縄県に申請する構えでいる。玉城デニー知事は認めない方針で、また法廷闘争となる公算が大きい。
安倍晋三政権は沖縄の民意を顧みず、県条例もないがしろにして計画を推し進める。沖縄県にとどまらず、対等な国と地方との関係を根底から揺さぶりかねない深刻な問題をはらむ。
与党多数の国会や司法が政府の手法を是認するのなら、地方自治体がゆがみを正さなくてはならない。全国知事会をはじめ地方6団体は安倍政権に工事の中止を強く求め、まずは対話の席に着くよう迫ってほしい。