https://www.hokkaido-np.co.jp/article/315942
http://archive.today/2019.06.17-000636/https://www.hokkaido-np.co.jp/article/315942
乳幼児の痛ましい虐待死が後を絶たない。子どもを救う児童相談所と警察の連携の強化と同時に、親の支援も課題だ。
札幌市の2歳女児が衰弱死した事件では、母親は未成年で妊娠したシングルマザーで、児童福祉法に基づく支援の対象だった。
新潟県長岡市で3カ月の長女を殺害した育児休業中の母親は、育児疲れを何度も訴えていた。
昨年、愛知県豊田市で11カ月の三つ子を育てる母親が次男を殺害した事件では、多胎児の養育への支援の乏しさが浮かび上がった。
どんな事情であれ、幼い命を奪うことは決して許されない。
とはいえ、虐待予防のためのさまざまな制度が、必ずしも十分に機能していないのも事実だ。
国は妊娠期からの切れ目のない支援を掲げる。悲劇を繰り返さぬよう、実務を担う自治体は、踏み込んだ支援を進めてほしい。
妊産婦指導や乳幼児健康診査、乳児家庭全戸訪問など、自治体の子育て支援は多岐にわたる。
その目的は、気がかりな親子の存在にいち早く気付き、確実に相談や支援につなげることだが、一連の事件は支援の隙間で起きていたことがうかがえる。
札幌市の事件の母親は「特定妊婦」に認定されていた。
経済的困窮や被虐待体験など、特に事情のある妊婦について、保健師らが出産前から養育指導にかかわる。国の「市町村子ども家庭支援指針」でも改めて目配りの必要性が強調されている。
ところが、乳幼児健診を受けなかった後も、手紙を出して反応を待つにとどまり、区外への転居後は記録も引き継がれなかった。
産後うつ対策のケア事業や、保育施設を利用していない親子向けの交流事業も盛んだが、これらを利用する余裕もない人こそ支援を必要としているのが実情だ。
子どもの成長や問題の変化によって窓口が変わり、支援が途切れやすいとの批判がある。
国は自治体に対し、ワンストップ相談窓口「子育て世代包括支援センター」の2020年度末までの開設を努力義務とした。
既存の施策の寄せ集めで終わらせないためには、母子保健と児童福祉の専門職が情報共有を密にしつつ、親子に積極的に働きかける努力が欠かせない。
子育ての負担が母親に偏る現状の改善も急務だ。男性の育休取得の推進をはじめ、父親も主体的に育児を担える環境づくりこそ、国の役割である。