[復帰50年に向けて]振興の在り方再考せよ - 沖縄タイムス(2019年5月15日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/419850
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沖縄の施政権が返還されてから、きょうで47年となる。
2012年に始まった現行の沖縄振興計画「沖縄21世紀ビジョン基本計画」は終了まで3年を切っており、時代の移行期にある。「ポスト復帰50年」をどう構想するか、過去を振り返り、未来を見定めたい。
「本土との格差是正」を目指して始まった復帰後3次までの振計、「自立型経済の構築」へと重心を移した4、5次の振計によって、道路や空港など社会資本が充実し、観光や情報通信産業が大きく成長した。
成長を物語る指標の一つが、好調な県経済を背景に改善している失業率だ。
県のまとめでは18年度の完全失業率は3・1%で過去最低を更新。2月単月では全国平均を下回る2・0%だった。
21世紀ビジョン基本計画が最終年度の目標とする失業率4・0%はすでに達成されている。復帰前後の基地従業員の大量解雇が押し上げ、本土との格差の代名詞の一つともなっていた高失業率は、47年たって全国並みに近づいてきた。
とはいえ失業率などの経済指標の改善が、「個人の生活の豊かさ」に即結び付いているわけではない。
格差のもう一つの代名詞である1人当たり県民所得が全国の7割水準にとどまっているのは、非正規労働者の割合が全国一高いという「雇用の質」が影響している。大学進学率の低さもまた無関係ではない。

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過去の振計ではよく「目標を達成できたのは人口くらい」と皮肉を言われたが、人口増が地域の活力となり沖縄の強みとなってきたことは事実である。
だが、その人口も30年以降、減少に転じると予測されている。人口減少ばかりではない。人口構造そのものが大きく変わろうとしているのだ。
国立社会保障・人口問題研究所による15年と40年の比較で、県内の全世帯に占める65歳以上の高齢者世帯の割合は29・7%から41・4%、高齢者人口における1人暮らし比率は19・4%から23・9%に増加する。
介護問題一つをとっても極めて困難な時代の入り口へ差し掛かっていることを突き付ける数字である。
次期振計では現役世代の減少という局面を想定しながら、人口減少にどう立ち向かうかもテーマの一つとなるだろう。

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沖縄振興体制の問題は多い。21世紀ビジョン基本計画が基軸とする考えは「沖縄らしい優しい社会の構築」だが、福祉や子どもに関する予算は沖振法の中で獲得しにくい仕組みになっている。
振興と基地とのリンク論も幾度となく繰り返されており、この際「基地維持装置」としての側面も全面的に洗い直すべきだ。
ポスト復帰50年の振興の在り方は、沖縄の未来につながる最大の課題である。
知事選で「新時代へ踏み出そう」と訴えた玉城デニー知事には強い覚悟と指導力で時代を切り開いてもらいたい。