<金口木舌>文洋さんの旅に学ぶ - 琉球新報(2019年6月12日)

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修学旅行で長崎を訪れたのは40年前。沖縄を離れたのは初めて。日本初上陸の気分だった。船内で一泊、日本は意外に近かった。同じ青空が沖縄から長崎まで続いていることが不思議に思えた

与論島を訪ねたのは30年ほど前だった。島内を走る車は鹿児島ナンバー。店を数軒回ったが、オリオンビールは見つからなかった。水平線の向こうに浮かぶやんばるの山並みが意外に遠く感じた
▼沖縄と日本本土との距離を時折考える。国政の中枢たる東京の永田町や霞が関は県民にとって最も遠い場所ではないか。旅客機に乗れば数時間、でも沖縄から発する声は届かない
▼県出身の報道写真家、石川文洋さんが日本列島3500キロ縦断の旅を終えた。原発事故の被害に苦しむ福島、新基地建設が進む沖縄と東京の遠い距離を身をもって実感したに違いない
▼「平和の礎」を訪れ「なぜ、このような状況になったのか。政治ですよね、軍隊ですよね」と語った。写真家はベトナム戦争で庶民の苦しみを直視したように、沖縄戦の苦しみを間近に見つめる
▼「沖縄は良い所だ。半面、大きな基地を抱えている。その中で沖縄の人たちは一生懸命に平和へ向かって生きている」。那覇市のゴールでこう語った石川さんは日本を縦断し、庶民の喜びや嘆きに触れ、カメラで記録した。東京の為政者たちとの距離も。その旅に学ぶことは多い。