[ハラスメント規制法]実効性の担保が課題だ - 沖縄タイムス(2019年5月31日)

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職場のハラスメント対策強化を柱とした「女性活躍・ハラスメント規制法」が成立した。パワハラ、セクハラ、マタニティーハラスメントを「行ってはならない」と明記、事業主にパワハラ防止策を取るよう初めて義務付けており、一歩前進といえる。
一方、罰則を伴う禁止規定はなく、早くも実効性の担保に疑問の声が上がっている。
同法で新たに対策が義務付けられたパワハラは(1)優越的な関係を背景に(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により(3)就業環境を害する-を要件とした。大企業では来年4月から、中小企業は努力義務でスタートし2年以内に対策が義務化される予定だ。
セクハラについては、社外での被害の対策も盛り込んだ。加害者側の事業主は、被害者側の事業主からの事実確認などの協力要請に応じる義務を課した。
パワハラ、セクハラ、マタハラについては被害相談を理由にした不利益な取り扱いを禁止。国、事業主、労働者は、他の労働者への言動に注意を払う責務があるとした。また、客などによるカスタマーハラスメントや就活生へのセクハラについても相談体制の整備など対応を促した。
規制法は、ハラスメントに対し企業の責任を広く明確化した点で評価できる。しかし上司や部下、客や取引先などの上下関係がある職場では声を上げることすら難しい。やっと訴えたところで加害者に対する職場内の処分がなかったり、労基法が適用されなかったりなど被害者の尊厳回復の道筋は険しい。同法がその解決策となるかは不透明だ。事業主は法の趣旨を十分に鑑みて対策を講じてほしい。

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ハラスメントの訴えは増えている。県内で過去1年間に報道されたパワハラ事案は7件、セクハラ事案も3件あった。行政や学校、金融機関や報道機関など職場はもちろん、自治会や地域の団体などからも訴えがあり、表面化しているのは氷山の一角とみられる。「パワハラ」「セクハラ」の言葉が入った本紙記事は2018年5月30日~19年5月30日の1年間で計73件。10年前(計18件)の約4倍に上り、社会の関心は高まっている。
労働団体などは、損害賠償請求の根拠となったり、強い制裁を伴ったりするようなハラスメント行為を禁止する法整備を求めている。国際労働機関(ILO)の6月総会では、仕事を巡るあらゆるハラスメントを禁止する条約が採択される見通しであることを見ても、規制法は同問題の入り口に立ったにすぎない。

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ハラスメントは深刻な人権侵害だ。発生時の対応はもちろん、そもそも起こさないことが肝要だ。しかし事案からは、事業主が訴えられるケースも目立つ。被害に遭った労働者は、体調不良に陥って休職や退職に追い込まれることも少なくない。
仕事の効率を上げる観点から見ても、ハラスメントは非生産的な行為だ。なくすには人事権や管理権を有し、職場で権力を行使する立場にある事業主や管理者の意識改革こそが必要だ。