<金口木舌>法益があべこべだ - 琉球新報(2022年9月15日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-1583954.html

1942年の夏、長崎県佐世保港での出来事という。宿題で9歳の男児が海の写生をしていたらスパイの嫌疑をかけられ軍の施設で厳しい取り調べを受けた

▼スパイ防止を目的とした改正軍機保護法は軍事施設の撮影、模写を禁じた。佐世保港は海軍の拠点。高台からの風景画が諜報と疑われた。子どもの写生にも容赦ない。「生きて帰れないかな」。80歳の男性が当時の恐怖を語った本紙記事(2014年1月17日)を思い出した
▼敗戦後に改正軍機保護法は廃止されたが、そんな法が復活したかと思わせる。重要土地利用規制法が今月中に全面施行される
自衛隊や米軍基地など周辺の土地利用を規制する。航空機の離着陸を妨げる工作物設置など各施設の機能を阻害する行為も調査対象とするが、行為の主体は人に他ならない。人物調査が主眼だろう
▼法が指定する注視区域は沖縄では全域がなり得ると専門家はみる。人が注視対象とは。法で守るべき利益主体があべこべでは。子どもの行動さえ疑いの目を向ける。そんな時代の再来はまっぴらだ。