[民生委員不足]役割増す活動に理解を - 沖縄タイムス(2019年5月10日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/418017
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住民の見守りや福祉行政への橋渡し役として、地域福祉の最前線で活動する民生委員・児童委員が不足している。
県によると、県内全域の定数に対する充足率は86・5%(4月1日現在)となっている。県全体の定数2399人に対して、委嘱しているのは2076人。2016年12月時点の全国平均は96・3%で、全国最低水準にある。
民生委員・児童委員は、厚生労働大臣から委嘱を受け、無償で地域や社会福祉のためにさまざまな活動、相談・支援を担うボランティア。支援内容は、医療や介護、子育てなど幅広く、住民にとって身近な相談役として心強い存在でもある。
欠員数が多いのは那覇市の68人、次いで沖縄市の34人、名護市25人、うるま市23人。定数を満たしているのは伊江村竹富町など小規模の離島町村など10町村。
充足率が低い理由には、米軍統治で制度の導入が遅れ、活動や役割の認知度が低いことなどが挙げられる。
県が17年度に民生委員を対象にしたアンケートでは、活動の悩みや苦労として「プライバシーにどこまで踏み込んでいいのか戸惑う」が最も多かった。このほか「支援に必要な情報が十分に得られない(個人情報など)」「予防や発見につながる情報が得られない」「どこまで援助できるかなど、支援の範囲や方法が分からない」などが続いた。
孤独死やひきこもり、虐待など住民が抱える問題は複雑多岐にわたり、深刻化する中で、支援の難しさ、負担も重くなっている実情もある。

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県は17年度から民生委員が活動しやすい環境づくりに向けた事業を実施している。相談支援活動のヒントになる小冊子を作成したり、専門・関係機関との連携を強くするネットワークづくりなど民生委員の負担感を減らし、地域に即した取り組みを支援する。
12月には3年に1度の一斉改選があり、新たな担い手の確保が課題となる。
地域のつながりが薄れる時代だからこそ、困り事や悩み事を吸い上げる役割はますます重要になる。行政にはきめ細かなサポートを継続してもらいたい。
民生委員が役割を十分に果たすためには、地域の理解も欠かせない。
独り暮らしの高齢者の孤独死を目の当たりにして、支援を拒否されても粘り強く、献身的に住民に寄り添う民生委員も少なくない。役割の重要性を周知することが担い手の確保にもつながるだろう。

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家族が抱える問題のほか、災害時などの安否確認や避難誘導といった地域の安心安全に関わる課題など、今後民生委員の守備範囲も広がってくる。
5月12日は「民生委員・児童委員の日」。18日までの1週間は「活動強化週間」として各地でPRイベントや啓発活動が行われる。
誰もが安心して暮らせる社会の実現には、地域全体で取り組む必要がある。強化週間を契機に、民生委員の活動を見つめ直し、それを支えていくためにも県民全体で理解を深めたい。