(結愛ちゃん虐待死)救えたはずの命なのに - 沖縄タイムズ(2018年6月8日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/264159
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「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」「あそぶってあほみたい…もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします」
東京・目黒区で父親から虐待を受けて死亡したとされる船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5)がノートに書き残していた。
父親から暴力を振るわれ続け、ろくに食事も与えられず、自宅に閉じ込められた状態で、真冬にベランダに出されたこともあった。
すがりたい親におびえながら、痛みや寒さに耐えながらの苦痛の日々。「ゆるしてください」とつづったあどけない女の子の悲鳴に、胸が締め付けられる。 
死亡時、体や両目の周りには殴られた痕のあざが、足裏にはしもやけもあった。体重は5歳児の平均の20キロを下回る12キロしかなかったという。警察は保護責任者遺棄致死の疑いで両親を逮捕した。
結愛ちゃんを巡っては、以前住んでいた香川県児童相談所が2度も保護し、県警も父親を2度傷害罪で書類送検したが不起訴処分となった経緯もある。救えたはずの命だった。しかし、救えなかった。なぜなのか。
結愛ちゃん一家は今年、香川県から東京に移り住み、香川の児相から東京の児相に事案は引き継がれたが、東京の児相は結愛ちゃんに接触すらできなかった。
東京の児相は危険が差し迫っているとの判断をしておらず、警察との連携も後手に回った。
児相、警察、自治体は一連の経緯を検証し、問題点を洗い出す必要がある。

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警察庁によると、虐待された疑いがあるとして昨年1年間に全国の警察が児相に通告した18歳未満の子どもは、前年より20・7%多い6万5431人だった。統計をとり始めた2004年以降で最多となった。
生命の危険がある緊急時や夜間に警察が保護した子どもは3838人で、5年連続で増加した。
2000年の児童虐待防止法施行で、子どもへの虐待を児相に通告するよう国民に義務づけて以降、社会的関心は高まった。市民から警察への通報が、警察から児相への通告にもつながっている面もある。
日本小児科学会の推計では、虐待死の可能性がある子どもは全国で年約350人に上る。悲しく深刻な事態が依然、続いている。
子どもたちを守るために、関心を一層高めると同時に、関係機関の情報共有、連携の円滑化、強化が欠かせない。

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16年の児童虐待防止法改正で児相の権限が強化され、子どもの安全を守るため家庭に強制的に立ち入る手続きが簡略化された。
だが、現場では親の意向に反した権限行使にためらいがあるという。その後の支援に支障が出るとの懸念が拭えないからだ。
児相の対応件数の増加に児童福祉司の数が追いついていない現状もある。
子どもを虐待から守る。そのために国から住民まで改善への知恵と資源を注ぐことを止めてはならない。