https://mainichi.jp/articles/20180405/ddm/005/070/037000c
http://archive.today/2018.04.05-070754/https://mainichi.jp/articles/20180405/ddm/005/070/037000c
子どもたちに無料や低額で食事を提供する「子ども食堂」が全国で2286カ所に上ることが運営団体の調査でわかった。
子ども食堂は始まってまだ5〜6年しかたっていない。地域住民主体の活動がこのような勢いで全国に広がっていることを心強く思う。
まともな食事が学校の給食だけという子どもの存在が話題になったのは、2009年に政府が初めて子どもの貧困率を公表したころだ。過去1年に家族の必要とする食料を買えなかった経験のある世帯が約15%との調査結果もある。
14年に施行された子どもの貧困対策法が弾みとなり、地域住民やNPO法人、社会福祉法人、企業などが子ども食堂の運営に乗り出した。
困窮家庭の子どもへの食事提供などの生活支援が、当初の子ども食堂の目的だ。ただ、子どもの貧困は表面上は見えにくく、真にニーズのある子だけを集めるのは難しい。
このため、困窮家庭の子のみならず、一般の子どもや1人暮らしの高齢者の受け入れも増えてきた。最近は地域住民の「よりどころ」としての機能を担う子ども食堂も多い。
誰もが気軽に運営に参加できるところがメリットだが、その半面、運営基盤の弱さも指摘される。資金や人手が足りないため、月1〜2回しか開催できないところが多い。食中毒などの衛生面、事故や火災などへの安全管理も懸念されている。
ただ、国や自治体に財政支援を頼ると、規制が強化されて運営主体が制限される恐れがある。即効性のある「成果」も求められがちだ。
行政の補助金に頼らず、地域に密着した息の長い活動を広げるには、町内会や小学校区のような単位で活動場所や資金を調達できる仕組みを作る必要がある。
かつては親に養育能力がない場合でも、親戚や近隣住民の中に補完的に子どもの世話をする人がいたものだ。しかし、家族や地域の人間関係が希薄化し、支え合い機能が縮小しているのが今日の状況だ。
乾いた地域社会にとって、子ども食堂は小さなわき水に過ぎないかもしれない。しかし、地域から自発的に始まった取り組みが全国に広がっている。子どもたちを潤そうという活動を枯渇させてはならない。