<金口木舌>生活者の視点で - 琉球新報(2019年4月20日)

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小林多喜二の小説「蟹工船」は、洋上でカニを捕り、船内で加工する労働者の物語である。長時間働かされ、体調不良でも休めない。貧しさなどから労働者は過酷な環境から抜け出せない

総務省が2012~17年に事故や病気などで171人の外国人技能実習生が死亡したと3月に発表した。死因は事故死、病死が多いが、自殺もあった。過酷な労働環境も一因にあるだろう。「蟹工船」を想起する
少子高齢化に伴う深刻な人手不足を理由とし、外国人労働者が増え続けている。沖縄労働局によると、18年10月末現在の外国人労働者は8138人に上り、ネパール人が1998人で最多、ベトナム人が1186人と続く。宿泊業・飲食サービス業、卸売業・小売業で働く人が多い
▼4月1日に改正入管難民法が施行された。技術移転が目的の「外国人技能実習生」と留学生のアルバイトに制限していた就労を単純労働にまで幅広く門戸を開く
▼さらに増える見込みだが、外国人相談窓口の設置、生活支援などの制度は十分ではない。言語や文化の違いも壁になるだろう。雇用の場でも弱い立場に置かれやすい
▼結婚し子どもが生まれても、ふるさとから家族を呼び寄せても、セーフティーネットは十分ではない。さまざまな職種で働く外国人を見かけるたびに心配になる。外国人は単なる「労働力」ではない。一緒に暮らす生活者である。