https://mainichi.jp/articles/20181226/ddm/005/070/095000c
http://archive.today/2018.12.26-003005/https://mainichi.jp/articles/20181226/ddm/005/070/095000c
政府は、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた基本方針を閣議決定した。併せて受け入れ14業種ごとの運用方針と、外国人労働者を支援するための総合的対応策も決めた。
基本方針の策定義務は、改正入管法に盛り込まれており、遅ればせながら年内に示した形だ。
基本方針は、深刻化する人手不足に対応するため、外国人を受け入れる必要性を強調する。中には、議論を呼ぶ項目が盛り込まれている。
経済状況などが変化した場合、関係機関の協議によって特定の分野について受け入れを止めることも一つだ。14業種は、製造業からサービス業まで幅広い。景気から受ける影響はさまざまだ。政府は、労働者の送り出しが見込まれる9カ国と2国間協定を結ぶ予定だ。相手国との信頼関係を維持するためにも、情報の共有を密にする必要がある。
新制度下での労働者の受け入れに当たっては、企業の姿勢が大事だ。景気に便乗して、解雇するなど差別的な処遇が認められないのは当然だ。政府は日本人と同じ待遇を企業に求め、法務省令に盛り込む方針だ。厳しく指導していく責任がある。
特定技能の資格を持つ労働者が、賃金の高い東京など大都市に集中する恐れがあることも、基本方針は課題に挙げた。地方の人手不足解消という目的が果たせなくなるからだ。新制度は同一業種内の転職を認めており、転居に制限がない。
基本方針には、新資格を得た外国人が大都市圏に過度に集中しないよう必要な措置を講じると書き込まれた。労働力に偏在があれば、業種ごとに企業や業界、官庁などで作る協議会で話し合うという。ただし、努力規定にとどめたのは、実効性がある対策が難しいからだろう。
新制度の土台になるとみられている技能実習制度では、地方の零細企業が、低賃金での雇用に依存しているような例が問題になっている。
まず、企業が低賃金体質を改めるのが先だ。地方自治体も、外国人が落ち着いて働ける生活環境の支援に力を入れる必要がある。
突貫工事的に作成された基本方針は中身が薄く、法務省令の制定も年越しになった。海外の労働者に選ばれる国になるためにも、政府がその最終責任を負うべきだ。