https://mainichi.jp/articles/20181128/ddm/005/070/035000c
http://archive.today/2018.11.28-015826/https://mainichi.jp/articles/20181128/ddm/005/070/035000c
急ごしらえで完成度の低い法案であることは誰の目にも明らかなのに、異論ばかりか建設的な提言すら一切受け付けようとしない政府・与党の専横ぶりはすさまじい。
外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正案が衆院を通過した。衆院法務委員会の審議はわずか17時間余り。野党は山下貴司法相の不信任決議案を提出して抵抗したが、与党側が採決を強行した。
政府は従来の技能実習制度を土台に新たな在留資格制度を構築しようとしている。このため法案審議では、新制度の是非に入る前に、実習生が低賃金や長時間労働を強いられてきた実態がクローズアップされた。
そもそも途上国への技術移転という国際貢献を建前とする技能実習制度を人手不足対策に利用してきた「ごまかし」がゆがみを生んでいる。政府はその問題に正面から向き合わず、新制度と実習制度は別ものであり「密接不可分ではない」との強弁を繰り返してきた。
一方で、来春に技能実習を終える外国人が「万単位」で新資格に移行すると見込み、法施行を来年4月に間に合わせなければならないと主張するのは明らかに矛盾している。
技能実習制度の実態を把握し、問題の解決策を見いださないまま、新制度の設計ができるのか。技能実習現場や自治体の声を聞く地方公聴会も開かれてしかるべきだろう。
その意味で入管法改正案の議論は緒に就いたばかりだ。
来年4月の施行ありきで今国会成立を急ぐ安倍政権の強硬姿勢が際立つ。議論を深めると、法案の不備が次々に発覚して収拾がつかなくなると恐れているようにもみえる。
もとより法案自体、新制度の設計を省令に委ねた立法府軽視の形式を取っている。外国人労働者の社会保障や生活支援などの受け入れ態勢づくりも先送りしている。審議を通じて修正するか、政府に具体的な運用方針を答弁させ、行政に縛りをかけるのが国会の役割であるはずだ。
与党は安倍晋三首相があすから南米に出張するため、その前の衆院通過にこだわったようだ。国家百年の計ともいうべき重要法案であるにもかかわらず、数日間の外交日程を理由に採決日を逆算して設定するのは、事の軽重を誤っている。