(余録) 陸軍の青年将校らが政府首脳を襲撃した1936年のクーデター… - 毎日新聞(2019年2月24日)

https://mainichi.jp/articles/20190224/ddm/001/070/143000c
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陸軍の青年将校らが政府首脳を襲撃した1936年のクーデター、2・26事件。背景に政治腐敗や、庶民生活の困窮があった。昭和史に残る大事件から間もなく83年。平成が終わろうとする今、昭和はますます遠くなる。
昭和の庶民生活を振り返る時、映画「男はつらいよ」を思い出す人も多いのではないか。主人公の寅さんこと車寅次郎の誕生日は、2・26事件の当日という設定だった。監督の山田洋次さんの著書「悪童 小説寅次郎の告白」で知った。東京・葛飾柴又にある団子屋の軒先で、布団にくるまれて泣いていた。名付け親は柴又帝釈天の御前様だった。
同書によれば、寅さんの子供時代は戦争を抜きにしては語れない。対米開戦、父親の出征、東京大空襲、敗戦……。そのルーツを知るほど、映画の人物像は戦前、戦中の苦難を乗り越えた人生があったからこそ生まれたのだと分かる。
第1作は69年に公開された。故郷の柴又を飛び出した寅さんが20年ぶりに帰ってくる。以来、日本の繁栄期と重なるように人気シリーズは続く。
その第1作から50年を経て、新作が年末に公開される。寅さん役の渥美清さんが亡くなってから23年。映画は過去の映像を取り入れて製作される。主役はもちろん寅さんだ。
山田さんの言葉。「寅さんをもう一度観(み)ることで、あの日本人が豊かな気持ちでいた時代を想起しつつ、次の時代へギアチェンジしなければいけないのではないか」。新しい時代へ転換する時期に寅さんに再び会う意味を考える。

 

 

悪童 小説 寅次郎の告白

悪童 小説 寅次郎の告白

 

 

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