[係争委 申し出却下]疑問は何も解消されぬ - 沖縄タイムス(2019年2月19日)

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辺野古新基地建設を巡り、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会(係争委)」は18日、県の審査申し出を却下すること決めた。
県の埋め立て承認の撤回を国土交通相が執行停止したのは違法だとし、昨年11月、取り消しを勧告するよう審査を申し出ていた。
富越和厚委員長(元東京高裁長官)は会合後の記者会見で、国交相が撤回の効力を停止したことは、係争委の審査対象である「国の関与」に該当せず、「県の申し出は不適法」と理由を説明した。
国交相の対応が違法かどうかの実質的な審議はせず、入り口段階での「門前払い」である。有識者5人の全員一致という。
埋め立て承認取り消しを巡り、2015年に同じ構図で却下された際、係争委は、防衛省沖縄防衛局が「私人」として執行停止を申し立てるのは可能とする国交相に対し、「当否の疑問も生じる」としつつ「一見明白に不合理とは言えない」としていた。今回は「一般私人と異なることはない」と審査対象となる余地を自ら狭めた格好だ。
だが多くの行政法学者が国の違法性を指摘するように、係争委の姿勢は前回よりも後退したと言わざるを得ない。
防衛局は行政不服審査法(行審法)に基づき執行停止を申し立て国交相が決定した。
行審法は一般私人の利益を救済するための法律であり、県は防衛局が私人になりすましたとし、趣旨に反すると指摘していた。
公有水面埋立法では民間事業者は県から「許可」を受け、国は「承認」を受けなければならない。防衛局が受けたのは「承認」であることからも明らかだ。

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内閣の一員である国交相は防衛局と一体の立場であると県は指摘する。「第三者たるべき審査庁ではない」と主張していたが、係争委は言及しなかった。
係争委の結論は今月28日が期限だったが、なぜこの時期に却下の判断をしたのだろうか。思い出すのは1996年9月の県民投票である。告示前日の8月28日、代理署名訴訟の上告審が開かれ、最高裁大法廷は上告を棄却し、県敗訴が確定している。
県内ではいま県民投票が告示され、関心の高さを示すように期日前投票が昨年9月の知事選を上回るペースで進んでいる。
投開票の今月24日を前にした却下で県民投票に水を差し、県民のあきらめ感を醸成しようとしたのではないのかとの疑念が拭えない。

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富越委員長が言うように、今回の却下は県が行った撤回の適法性についての判断ではない。
玉城デニー知事は今後、国による効力停止決定を不服として、取り消しを求める訴訟を福岡高裁那覇支部に提訴する方針だ。
係争委は国交相の対応についても違法かどうかの判断を回避している。県は「国の違法な関与」と訴え、撤回はなお有効だと主張している。係争委の却下は最終的な判断でない。まともな政府であれば工事を止めるのが筋である。