辺野古撤回停止提訴 裁判所は公正な判断を - 琉球新報(2019年3月24日)

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米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で、県は埋め立て承認撤回の効力を停止した国土交通相の決定は違法だとして、執行停止決定の取り消しを求める訴訟を福岡高裁那覇支部に提起した。工事強行を続ける国に対抗するための措置としては当然だ。
これで新基地建設を巡る県と国の法廷闘争は6度目となる。今回の訴訟では行政不服審査制度を利用した沖縄防衛局の手続きや国交相の執行停止の決定が違法かどうかが争点となる。
県は訴状で国交相の執行停止の決定は「国の関与」に該当すると主張している。これは2月に国地方係争処理委員会が出した結論を真っ向から否定するものだ。
係争処理委員会は国交相の決定を不服として県が出した審査請求について、国交相決定は審査対象の「国の関与」に当たらないとして却下している。
一方、県は埋め立て承認申請をした沖縄防衛局は「私人」ではなく「固有の資格」を持つ立場にあると主張している。理由は公有水面埋立法で埋め立てをする主体が国の場合は「承認」、国以外の一般人は「免許」をそれぞれ得る必要があり、明確に区別されていることを挙げている。
係争処理委員会は「承認」と「免許」の違いについて「埋め立て後の所有権が違う点だ。効果は一般私人と異ならない」として相違はないとの判断を示している。免許で一般人に設定される権利と承認による国の権限と法的地位は明らかに違う。係争処理委員会は県の請求を却下するために、法を恣意(しい)的に解釈しているとしか思えない。
これまでの訴訟では、裁判所が国側に有利となる訴訟指揮をしているとしか思えない動きが見られた。国が起こした代執行訴訟と県が起こした抗告訴訟、執行停止取り消し訴訟は、代執行訴訟の裁判長による異例ともいえる和解勧告に県と国が応じ、取り下げられた。
その後、国は手続きをやり直し、高裁那覇支部に違法確認訴訟を提起し、最高裁で県の敗訴が確定した。
和解で取り下げた国による代執行訴訟はいくつもの手続きを省いて最も強権的な手段に出たものだ。そのまま裁判が進むと、県の反論や防御の機会を奪った国の行為自体に瑕疵(かし)があると判断され、国が敗訴する可能性があったとの指摘がある。
裁判長が和解勧告という形で国敗訴という事態を事前に食い止め、国に助け船を出したとみられてもおかしくない。
新基地建設を巡る行政の第三者機関の判断や訴訟の結果を見ると、日本に三権分立が存在しているのかと疑いたくなる。県が今回提起した訴訟を指揮する福岡高裁那覇支部は、後世に誇れる公正な判断を下してほしい。そのことを多くの県民が注視している。