[通学費の負担軽減]スピード感持ち対応を - 沖縄タイムス(2019年2月13日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/384320
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県の来年度予算案に「中高生通学実態調査事業」が盛り込まれた。
約1800万円を計上する新規事業で、県立高校に通う全生徒を対象に通学費用などをアンケートし、中学生への調査も進めていくという。
「中高生のバス通学無料化」は、玉城デニー知事が知事選で掲げた主要政策の一つである。沖縄らしい優しい社会の構築を目指し、「経済環境にかかわらず、子どもたちが安心して学業に励むための支援が早急に必要」と訴えていた。
調査費計上は無料化に向けた動きと理解するものの、少々のんびりした印象を持つ。
県が2016年に県立高校2年生の半数と保護者を対象にした「高校生調査」で、既に通学費が家計を圧迫し、学生生活にも影響を及ぼしている実態が明らかになっている。
この調査では1カ月当たりの交通費は5千円以上が全体の約32%、1万円以上が約15%を占めていた。
登下校時の交通手段は「家族による送迎」が約半数と多く、「バス」は3割前後。家族送迎の最大の理由が「交通費削減」だった。
自由記述欄に次のような保護者の声が載っている。
「なるべく乗り換えをしないように停留所まで30分くらい歩かせたり、親が迎えに行くまで2時間ぐらい待たせたりしてバス代を浮かせている」
その子どもたちは高校を卒業してしまったが、今、現に困っている子どもがいることも確かだ。速やかに手を差し伸べる必要がある。

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来年度予算案には「ひとり親家庭高校生等通学サポート実証事業」として約5300万円も計上されている。
本年度から継続する事業で、児童扶養手当を受給する世帯などの高校生に、バス通学費を補助する取り組みである。 
低所得世帯の高校生の通学費負担では、沖縄子どもの未来県民会議と沖縄都市モノレールの協定によって、モノレールが半額程度で利用できる軽減措置もある。利用者は18年3月末時点で385人だった。
より厳しい状況にある生徒への支援を厚くすることに異論はない。
ただ県立高校に通う生徒は約4万3千人。先の調査で困窮世帯の割合は29・3%に上った。
現状の支援は極めて限定的と言わざるを得ない。

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通学にかかる費用負担が高校選択に少なからず影響していることも分かっている。経済的理由で進路選択の幅が狭まっているのだ。
さらに入学後、交通費を工面するためアルバイトを余儀なくされている高校生も少なくない。アルバイトが長時間に及べば、勉強どころではなくなるだろう。
子どもの貧困対策の大きな柱の一つが教育である。
自宅から遠い高校に通う生徒へ通学費を助成するなど、家計負担を広く和らげる工夫が求められる。
危機感とスピード感を持って対応してほしい。