(小4女児死亡) 救える命だったのでは - 沖縄タイムス(2019年1月31日)

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学級委員長を務めるなどとても頑張り屋だったという。
千葉県野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さん(10)が自宅の浴室で死亡しているのが発見された。傷害容疑で逮捕された父親の勇一郎容疑者(41)の虐待が疑われている。母親(31)は警察に「夜中に起こして立たせることがあった。やめてと言ったが聞いてもらえなかった」と話している。
悔やんでも悔やみきれないのは、多くのSOSを出していたのに、受け止められなかったことだ。
心愛さんは2017年9月、糸満市から野田市立小に転校。学校が実施したアンケートで「父からいじめを受けている」と回答した。柏児童相談所が「身体的虐待を受けている疑いがある」と一時保護。「父に背中や首、顔をたたかれ、顔をグーで殴られた」「お母さんがいない時にたたかれる」などと告白。頬にたたかれたような痕があったという。
児相は保護中に父親と8回面会したが、虐待を否定。「虐待は一時的で、重篤でなく改善した」として保護を解除した。だが、その後心愛さんと父親との関係を一度も直接確認していない。継続的面談が必要だったはずである。児相は不手際を認めている。
18年1月に死亡時に通っていた野田市内の別の小学校に転校。今年1月の始業式から休んでいたが、児相は「夏休み明けに約1週間休んだこともある」とこの際も直接確認しなかった。救える命だったのではないか。
学校側も児相にすぐに連絡することをせず、家庭訪問もしなかった。大きなリスクにつながる認識がない上に消極的な関わり方である。

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心愛さんらは母親の実家がある糸満市に09年に転入した。17年7月、父親による心愛さんへの「どう喝」と、母親へのドメスティックバイオレンス(DV)の相談が親族から市に寄せられた。
糸満市は父親との面談を2度設定したが、キャンセルされ、家庭訪問ができなかった。市はこれ以上のことはしていない。身体的虐待を確認できるか学校側と連携したが、当時の担任教諭は「見える範囲ではあざなどは見当たらなかった。背中などは見ていない」と話す。心愛さんや母親から個別に事情を聴かなかったのだろうか。
家族は翌8月に野田市に転居。糸満市の情報提供文にはDVに関する記述はあったものの、心愛さんが父親からどう喝を受けていることは伝えていなかった。

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虐待が疑われるケースでは転居の際に情報共有することが重要だ。15年に宮古島市で起きた当時3歳の女児虐待死事件ではコザ児相と同市などで危機感に齟齬(そご)があった。
18年に東京・目黒区で両親から虐待を受けて死亡した当時5歳の船戸結愛ちゃんも香川県から東京に転居したが、差し迫った危険性の認識が共有されていなかった。
心愛さんの命を救うチャンスはあったはずである。児相、自治体、学校の連携はどうだったのか。痛ましい事件を二度と繰り返さないためにも徹底検証が必要だ。