県民投票3択可決 新基地の議論を始めよう - 琉球新報(2019年1月31日)

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名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票に「どちらでもない」という選択肢を加えて3択にする条例改正案が、県議会の賛成多数で可決、成立した。全会一致とならなかったのは残念だが、事務の不実施を表明していた5市長は参加の方向性を示している。全県実施ができる見通しとなったことを歓迎したい。
県民投票の是非、選択肢をどうするかという入り口論はようやく決着を見た。投開票日まで1カ月を切っている。残された日数の中で、新基地の是非という本来の議論に注力すべきである。
一時は5市の不参加表明で有権者の31%が投票の権利を行使できなくなるところだった。抗議と批判が広がり、県議会で与党内調整、与野党の調整が行われ、5市長の意向も確認した上で3択に修正する運びとなった。
県議会の全会一致が条件となったため、反対する議員が退席して全会一致となるよう調整が進められた。しかし、自民党会派はまとまらず、14人中5人が反対に回った。
自民党県連の照屋守之会長は責任を取るとして辞任届を出す一方で、松川正則宜野湾市長と面談するなど、全県実施に向けて努力している。2月24日に一斉に投開票ができるよう、5市長に適切な判断を求めたい。
1996年以来23年ぶりの沖縄県民投票である。都道府県レベルの住民投票は他に例がない。投開票の事務は選挙人名簿を管理する市町村が行うが、それが義務なのか、市町村長に裁量権があるのかが争点になった。今回の混乱は、地方自治法の定めのあいまいさを突いた面もある。
しかし、市民であり県民でもある有権者投票権が市議会や市長の判断で奪われるのは、法の下の平等の侵害であり憲法違反だ。住民から訴訟の動きが起きたのは当然である。各市長には市民の権利を尊重する判断が求められた。
県議会で反対した議員は、普天間の危険性が置き去りになるとか、基地問題は県民投票になじまないと主張する。
県民は、普天間周辺の人々の痛みも辺野古を巡る人々の苦悩も知っており、二者択一で割り切れないことは分かっている。その中で、昨年9月の県知事選をはじめとして選挙で民意を示してきた。
しかし、政府は、話し合いはポーズだけで、民意を踏みにじって工事を強行している。二者択一論を掲げながら、辺野古の工事がいつまでかかるのか、普天間をいつ閉鎖・返還するのかも言わない。このような事態を「なじまない」という言葉で放置していいのだろうか。
県民投票は、県民の自己決定権獲得運動の流れの中にある。自分たちで考え、議論し、意思表示をする貴重な機会だ。投開票日まで時間は限られている。本音の議論を重ねて、高投票率で民意を明らかにしたい。